研究課題/領域番号 |
24689050
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
森田 明典 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90334234)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | p53阻害剤 / p53制御剤 / 放射線防護剤 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
平成26年度も、防護活性評価を進めていた二座配位性の亜鉛キレート化剤のうち,放射線抵抗性に関わるp53標的遺伝子、p21の転写を亢進させる8-キノリノール誘導体KH-3の解析を進めた。マウス前脚部の骨髄を鉛で遮蔽防護することによって骨髄死を回避する亜全身照射(SBI)による腸管障害解析モデルの解析から,KH-3には、腹部照射による腸管障害に抵抗性を付与する防護活性があることが判明していたが、この防護活性を腸上皮細胞のmRNA発現解析によって検証した。21 Gy SBIマウスの空腸上皮のリアルタイムRT-PCR解析から、p21をコードするCdkn1a mRNA発現の亢進、およびPUMAをコードするBbc3 mRNA発現の低下を認め、KH-3はヒト培養細胞における作用と同様の作用をマウス腸上皮に対しても示すことが明らかとなった。また、腸上皮幹細胞に対する防護効果をLgr5 mRNA発現量を指標に検討したところ、KH-3はSBI後の腸上皮のLgr5 mRNA発現量低下を抑制した。 また、研究協力者である東京理科大学薬学部・青木伸教授らによって合成された数十種の8-HQ誘導体のp53依存性放射線誘発アポトーシス抑制効果を検討したところ,いくつかの高活性化合物を発見した。その内の1つ,AS-2 (5,7-bis(N-methylaminosulfonyl)-8-hydroxyquinaldine)は転写非依存的にp53依存性アポトーシスを阻害してミトコンドリアの機能不全を防ぐことがわかり,骨髄死相当線量である8 Gyの放射線被ばくからマウスを防護した。細胞レベルのメカニズム解析を進めたところ、その効果はp53特異的ではあるが、p53転写を抑制せず、核ではなく細胞質のp53分布量を低下させる、これまでにないタイプのp53抑制効果を示す化合物であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度当初の計画は、亜全身照射モデルで活性評価したのがKH-3のみであったが、その他は概ね実行された。
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今後の研究の推進方策 |
亜全身照射モデルにおいては、シード化合物であるバナデートの活性評価を単回照射と反復照射にて実施し、耐容線量の向上効果を検討する。また、KH-3については、腸上皮組織に対する放射線防護効果の詳細な解析を進める。また、8-キノリノール誘導体の低毒性化を目指し、新たな官能基修飾を施した新化合物群の細胞死抑制活性の評価も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞計数装置の不調のため、年度末期間中に故障が生じた場合の修理対応費として確保しておく必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に物品費、もしくは機器修理費として使用する。
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