研究課題
平成27年度も、防護活性評価を進めていた二座配位性の亜鉛キレート化剤のうち、p53の放射線抵抗性機能を強化し、腹部照射による腸死を防護する転写調節剤5-chloro-8-quinolinol(5CHQ)の解析を進めた。5CHQの防護活性を示す線量減少率は、骨髄死相当線量の全身照射試験で1.2、腸死相当線量の腹部照射試験で1.3と、新規の放射線防護剤シードとして良好な値を示しており、投与マウスの異常行動も認められないことから、この化合物の作用機構解析に注力した。マウス前脚部の骨髄を鉛で遮蔽防護することによって骨髄死を回避する亜全身照射(sub-total-body irradiation; SBI)による腸管障害解析モデルの解析から、21 Gy SBIマウス空腸上皮における5CHQ作用として、p21をコードするCdkn1a mRNA発現の亢進、およびPUMAをコードするBbc3 mRNA発現の低下をリアルタイムRT-PCR解析で認め、5CHQはヒト培養細胞における作用と同様の作用をマウス腸上皮に対しても示すことが明らかとなっていた。本年度は組織解析をさらに進め、21 Gy SBIマウス空腸上皮の生存陰窩数の計数においても5CHQの顕著な放射線防護効果を確認することができた。また、5CHQの新たな活性として変異型p53を機能回復させる活性を見出した。他の研究グループによる先行研究として、一部の亜鉛キレート化剤が、亜鉛結合部位の構造以上を引き起こすR175H変異p53を機能回復させることが明らかにされており、これまで合成した種々の化合物についてR175Hを始めとする特定のp53変異体を活性化する作用がないか現在検討を進めているところである。このような活性を有する化合物は、正常組織の放射線防護効果だけでなく、p53変異がんの増感効果も期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Radiat. Res.
巻: 56 ページ: 760-767
10.1093/jrr/rrv030
http://www.tokushima-u.ac.jp/med/culture/iyo_rikogaku/