研究課題
本研究では、高分子型ミセルを用いた動脈硬化症ならびに動脈硬化症に起因する疾患を標的としたドラッグデリバリーシステム(DDS)について検討している。動脈瘤に対するDDSの評価には、昨年度までの知見に基づき、シロリムス誘導体を内包し、かつ、粒径を100nmに調整した高分子型ミセルを使用した。蛍光色素(Alexa 647)でラベル化した高分子型ミセルを用いた顕微鏡観察からは、腹部大動脈瘤組織内(ラットモデル)の弾性板が破壊された中膜ならびに外膜への高い集積性を確認できた。また、動脈瘤疾患部のαSMAとCD68を蛍光免疫染色し、ミセルとの共局在を確認した結果、99%以上のミセルがCD68陽性細胞と共局在することが明らかとなった。即ち、動脈瘤へ集積した殆どのミセルがマクロファージへ取り込まれていることが判明した。このようなミセルの大動脈瘤への集積に関しては、昨年同様に時間依存的に増加し、投与後約12時間で最大となるため、Enhanced permeability and retention (ERP)効果に類似した集積メカニズムと大動脈壁構造の破壊と炎症による血管透過性亢進が関与していると推察されている。一方、内膜肥厚に対する治療効果と作用機序に関する検討に於いても、Alexa647で蛍光ラベル化したエピルビシン内包ミセルを用いて病変組織の蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、粒径約40nmエピルビシン内包ミセルは内膜肥厚部に対して高い集積性を示すが、動脈瘤とは異なり、αSMAやCD68とは共局在しないことが確認された。昨年度までに明らかになった、同ミセルによる治療効果を勘案すれば、エピルビシン内包ミセルは内膜肥厚部へ集積した後に、局所で低分子のエピルビシンを叙法し細胞内へデリバリーされていると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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