研究課題/領域番号 |
24689052
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
武部 貴則 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (20612625)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 肝臓 / 膵臓 / 前駆細胞 / 三次元培養 |
研究概要 |
昨年度において、ヒトiPS細胞を用いた再生医療研究において、従来の「細胞の分化誘導」という開発概念から脱却し、異なった細胞系譜の時空間的な相互作用を活用した、「臓器の再構成に基づく分化誘導」を実現化した革新的な三次元培養技術を新たに開発し、ヒト臓器創出を可能とする細胞操作技術を確立した。すなわち、肝発生の初期プロセスを人為的に再現することのできる新たな三次元培養系により、ヒト肝臓原基の創出を可能とする基盤技術を確立した(PCT/JP2012/074840:組織及び臓器の作製方法)。本年度においては、研究代表者らが開発した手法により作製したヒトiPS細胞由来肝臓原基の治療効果の検証を目的として、重篤な免疫不全状態で異種細胞や組織の生着・分化が格段に優れる NOGマウスにおいて肝細胞が選択的・特異的に破壊される 、というAlb-Tk-NOGマウスへの移植実験を行った。驚くべきことに、iPS細胞由来肝臓原基の異所性移植群において、肝不全モデルマウスの生存率が著名に改善することを見出した。さらに、従来実施されてきたようなヒト成体肝細胞移植治療との比較実験の結果、血管系を有する臓器原基を移植することにより優れた治療効果を発揮可能であることが示唆された。臓器原基を移植する、という新たな治療概念によって、従来の細胞を移植するという治療を凌駕する革新的な再生医療を提供できるものと大いに期待される。成果は本年度において、著名な学術雑誌であるNatureおよびNature Protocols誌に発表を行った。 本法を基盤技術として、本研究開発が対象としている膵臓をはじめ様々なヒト臓器構成系を開発していくことにより、将来的に莫大な社会的医療ニーズに応え、多くの患者を救済することが可能な再生医療実現化へ向けて革新的な手法を確立できるものと大いに期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、H25、26年度での実施を予定していた、ヒトiPS細胞由来肝臓を用いたin vivo機能解析および治療効果の確認をすでに達成している。したがって、計画を大幅に超える進捗状況にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒト臓器を対象とした再生医療技術を実用化するために必要な様々な要素技術の開発を進めるとともに、膵臓を対象とした研究開発も加速化する。 (次年度の使用計画) iPS細胞の維持、肝・膵臓細胞分化誘導に必要な培地やサイトカイン等に必要な消耗品費に使用する。得られた細胞の評価のための、遺伝子発現解析試薬やFACS解析用蛍光標識モノクローナル抗体などの試薬にも経費が必要となる。また、研究の推進に必要な研究補助員の人件費にも利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度使用したサイトカイン試薬の調達コストが、一括購入などに伴い想定よりも安価に購入できたため。 ヒト膵臓前駆細胞をヒトiPS細胞からルーティンに分化誘導し、品質評価するための検証に用いる。さらに、ヒトiPS細胞から分化誘導した血管内皮細胞および間葉系幹細胞を用いてヒト肝臓原基の作製実験を実施する。まず、予備的検証のための小規模な実施体制構築に必要な培地・培養器材・サイトカイン等の消耗品のための必要経費に利用する。
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