研究課題/領域番号 |
24689053
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
星野 敢 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (10400904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / エピジェネティクス / LSD1阻害剤 / microRNA / 分子標的治療 |
研究概要 |
LSD1はH3K4me3(転写活性化)の脱メチル化を起こすとされる(Cell.2006)。我々は術前未治療の食道扁平上皮癌切除例の切片を用いて、癌部、非癌部での発現の検討を行い特にLSD1が癌部において強い発現を認めることを確認した。次いで、食道扁平上皮癌細胞株、T.TnとTE2を用いてin vitroでのLSD1 inhibitor(LSD1I)の抗腫瘍効果を確認し、LSD1Iが強い抗腫瘍効果を有し、アポトーシスの誘導も確認した。ヒストン蛋白メチル化による制御遺伝子の同定をMicroarrayにて行った。発現の低下する遺伝子ついてsiRNAの手法にて機能解析を行った。その結果、18および9の遺伝子の発現が亢進ならびに低下していた。PHLDB2遺伝子についてその発現をknock downした結果、増殖、浸潤能が低下した。切除例を用いて免疫組織学的検討を行った結果、PHLDB2高発現群は予後不良であり、その発現が有意な予後不良因子であった(Br J Cancer投稿中)。腫瘍抑制microRNAであるmicroRNA-375(miR-375)のin vivoでの抗腫瘍効果の検討を行った。デリバリーシステムの検証としてアテロコラーゲンと蛍光標識miRの複合体を作成しマウスの皮下腫瘍モデルに投与した結果、局所投与にて腫瘍における持続的な集積を認めた。次いでmiR-375を化学合成し抗腫瘍効果を検討した。miR-375投与群においてはコントロールmiR投与群に比し有意な腫瘍増殖抑制効果が得られた(Cancer Sci、Oncology投稿中)。血清中miR-1246について、食道扁平上皮癌患者血清中において発現が有意に高く、その感度・特異度が既知のバイオマーカーであるscc抗原より高く、新規のバイオマーカーとしての有用性が確認された(Br J Cancer. 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した当初の研究の目的に照らし合わせても、ほぼ順調に計画は達成しているものと考えられる。LSD1阻害剤はその有効性がin vitro、in vivoにおいて確認され、将来的な実臨床の場での応用に向けたtranslational researchとしての役割を果たしつつあるものと考える。またmiRについても新規バイオマーカーとしての有用性を報告、さらに治療法としての可能性についても検討を重ね紙面上の報告の段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様に基本方針としては交付申請書に沿っての研究推進ということになる。LSD1阻害剤については更なるメカニズムの検討を予定しており、クロマチン免疫沈降法を用いてヒストンのメチル化により誘導される遺伝子について検証すべきと考えている。これには次世代シーケンサーを用いた検討を予定している。miRについては新規バイオマーカーとしての有用性を示せたが、今後実臨床に向けた応用法としてmiRセットによるバイオマーカーとしての感度、特異度の検証も予定している。これには新たなサンプルを用いたvalidationも不可欠であり、現在サンプル収集も並行し行っている。
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