研究課題
硬組織の健常性維持には、骨の生成と吸収の均等なバランスが重要であるが、関節リウマチの骨量減少病態においては、骨形成にくらべて破骨細胞性の骨吸収が過剰になり、次第に骨構造が侵される。これまでの骨代謝研究では破骨細胞と骨芽細胞のバランスのみが注目されがちであったが、真に骨量減少病態を理解するには、炎症によって誘導される他の細胞系列との相互関係も考慮する必要がある。今年度は、(1) 関節リウマチの病態形成に関与する細胞群の同定をほぼ完了するとともに、(2) 同定された各々の細胞の発現する mRNA や蛋白質についての検討を推進した。また、(3) 上記より得られた知見をもとに、種々の因子が間葉系幹細胞に与える影響についての解析を行い、間葉系細胞の分化に関連する重要因子 (候補) を同定した。また、 (4) 同定された因子につき、loss-of-function 実験による機能解析をおこなった。これらにより、関節リウマチの病態発症時に、種々の関連細胞が骨内という特殊な微小環境の中でどのように連関して組織破壊と組織再構築を行っているか、その礎となる知見が得られつつある。現在、関節リウマチ誘導動物モデルを用いた実証実験を開始している。
2: おおむね順調に進展している
当該年度において、関節リウマチの病態形成に関与する細胞群の同定や間葉系幹細胞の分化機序に密接にかかわる因子の同定が順調に進んだことは、計画以上の進展だと言えるが、まだ生化学的・分生成物学的な検討が不十分であることなどを含めて総合的に考え、全般的な達成度については「②おおむね順調に進展している。」を選択した。
現在までの解析結果を考慮すると、研究方針に大きな変更を加える必要はないと考えられたため、関節リウマチの病態形成にかかわる細胞群の相互作用や、あるいは内部分子メカニズムについての解析を重点的に研究を押し進めることで、当初の計画通り、細胞間相互作用を考慮した関節リウマチの病理解明を目指す。
共同研究者との打合せ費用を勘案して旅費を計上していたが、所属研究機関への遠隔地会議システムの導入により、会議の一部を遠隔地会議で行うことができたため研究費の旅費使用が大幅に減じた。また、研究計画の遂行のために実験補助員を雇用する予定であった測定実験について、使用が簡便なキット類を使うことにより、現状の人員で対応できたため、当初計画よりも人件費や謝金における研究費使用が大幅に減少した (ただし、物品費への充当は増えている)。以上のような理由により次年度使用額が生じた。上述の理由により生じた次年度使用額分の研究費については、トランスクリプトーム解析やプロテオーム解析のための試薬や、必要な抗体の購入費として、平成26年度以降に有効に利用する。
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PLoS ONE
巻: 8 ページ: e72105
10.1371/journal.pone.0072105
http://www.ak.med.kyoto-u.ac.jp/group_research/asagiriG.html