研究課題
若手研究(A)
我々が同定に成功している小胞体ストレスセンサーOASISおよびBBF2H7の骨格系組織における機能解明を目指した。1.軟骨組織におけるBBF2H7の役割軟骨細胞においてBBF2H7はその下流で抗アポトーシス作用を示すATF5-MCL1経路を活性化させ、アポトーシスを回避していることがわかった。軟骨細胞の分化の過程では、大量の軟骨基質タンパクが合成されることによって生理的な小胞体ストレスが発生する。BBF2H7-ATF5-MCL1経路はこの生理的な小胞体ストレスによる細胞への傷害を回避するために活性化している可能性が示唆された。2.BBF2H7のC末端断片の役割BBF2H7のC末端断片が細胞外に分泌され、ヘッジホッグシグナルの活性化を介して周辺細胞の細胞増殖を促進していることがわかった。このことから、軟骨細胞においてBBF2H7はN末端断片による軟骨基質タンパクの分泌促進と、C末端断片による細胞増殖の促進という二つの機能をもつことが明らかになった。3.OASISおよびBBF2H7の活性化機構の解明OASISおよびBBF2H7の活性化機構解明を試みた結果、以下の特徴を有することが明らかとなった。(1)OASISおよびBBF2H7は常にプロテアゾームによる分解を受ける。(2)小胞体ストレスが負荷されると、OASISおよびBBF2H7は分解から回避し、安定化する。(3)安定化したOASISおよびBBF2H7はすみやかにゴルジ装置に輸送され、プロテアーゼによる膜内切断を受ける。(4)E3ユビキチンライゲースであるHRD1がOASISおよびBBF2H7のプロテアゾーム分解に関与する。以上のことから、HRD1の発現を減弱させることでOASISおよびBBF2H7の機能を促進できることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画であった小胞体ストレスセンサーの活性化機構の解明、転写因子としての機能の解明、分泌因子としての機能の解明の全てを達成し、小胞体ストレスおよび小胞体ストレス応答による骨軟骨組織の形成とその破綻によって発生する障害の一端を明らかにすることができたため、計画はおおむね順調に進展していると判断する。
各センサータンパクの転写因子および分泌因子としての詳細な機能を明らかにすることで、骨・軟骨代謝を制御する小胞体ストレス応答系のシグナル系統図を完成させる。同時に各小胞体ストレスセンサーの活性化を人為的に操作できる化合物を選定する。また、各センサーの欠損マウスを作製または入手し、疾患との関わりを追究する。
次年度にシグナル系統図を完成させるため、遺伝子導入実験を頻繁に行う予定である。そのために遺伝子導入試薬を含めた培養細胞実験に必要な試薬および器具を購入するために使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Cell death and differentiation
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/imaizumi/