研究概要 |
プロゲステロン(P)はP受容体(PR)を介して働く。分娩発来には子宮におけるP-PRシグナル減弱が重要と考えられており、早期のP-PRシグナル減弱いわば「P抵抗性」が早産の中心的な病因・病態であると推測される。本研究では、P-PRシグナルを調節するコレギュレーターやPRコシャペロンFKBP52に着目し、P-PRシグナル調節機構と早産との関連につき明らかにすることを目的としている。平成24年度の研究では、P抵抗性を有するFKBP52欠損マウスと自然発症早産マウスである子宮特異的p53欠損マウスを掛け合わせ、2重欠損マウスの早産の表現型を解析し、P抵抗性の早産への関与の検証を試みた。現在引き続き表現型の確認を行っている。また、妊娠子宮におけるPのターゲットとして野生型・FKBP52欠損・PR欠損の各マウス子宮を用いたプロテオミクス解析を行い、ガレクチン1というPR応答性遺伝子を同定した。さらにガレクチン-1投与により、P作用の低下による流産を抑制することを示した(Hirota Y, Endocrinology 2012)。今後はgalectin-1と早産についても検討を進める予定である。加えて自然発症早産マウスであるp53-欠損マウス子宮でもプロテオミクス解析を行い抗酸化酵素群の発現低下を検出し、酸化ストレスと早産との関連を明らかにした(Burnum KE, Hirota Y, et al. Endocrinology 2012)。さらに、妊娠前・妊娠初期・妊娠後期(正期産/早産、帝王切開/経膣分娩)由来のヒト子宮内膜間質細胞を用いて、PRの転写調節のターゲットとなる遺伝子を免疫沈降シーケンシングで抽出し、合わせてマイクロアレイを用いてP誘導性のmRNAを抽出した。現在免疫沈降シーケンシングとマイクロアレイの結果を合わせて情報解析を行っている。本検討により、正常妊娠の時期に応じたPRのターゲットのダイナミックな変化および早産に特異的な変化を明らかにでき、P抵抗性と早産の機序の解明に貢献できると考えている。
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