研究課題/領域番号 |
24689062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣田 泰 東京大学, 医学部附属病院, 臨床登録医 (40598653)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 早産 / プロゲステロン / 細胞老化 / ラパマイシン / p53 / mTOR / マウスモデル / LPS |
研究実績の概要 |
分娩発来には子宮におけるプロゲステロン(P4)作用の減弱が重要と考えられており、早期のP4シグナル減弱いわば「P4抵抗性」が早産の中心的な病因・病態であると推測される。本研究の目的は、P4シグナル調節機構と早産との関連を明らかにすることである。これまでの研究で、癌抑制遺伝子p53を子宮特異的に欠失したマウスにおいて、子宮内膜の細胞老化増強、Cox2・PGF2α上昇が起こり、早期の子宮収縮が誘発され約半数の個体が自然早産となることを見出した。またこの早産モデルにおいて、mTORC1阻害剤ラパマイシンの投与とp53/p21の2重欠損マウスを用いた検討から、p53欠損子宮ではmTORC1活性化が起こりp21を介して細胞老化が誘導され、Cox2発現が上昇し最終的に子宮収縮が起こり早産に至っていることがわかった。平成25年度の研究では、ヒト早産では細菌感染を合併することが多いことから、p53欠損早産マウスにLPSを投与し、早産の発症率を検討したところ、コントロールマウスでは妊娠の障害にならない量(10μg)のLPSによって、p53欠損マウスでは卵巣のP4産生が低下し100%早産をきたすことが明らかとなった(Cha J, JCI 2013)。このLPS投与によるp53欠損マウスの早産に対して、P4とラパマイシンとの同時投与によって、母体および胎仔に明らかな副作用なく早産とそれに伴う新生仔死亡を予防することができた。さらに、ヒト早産の臨床検体でも、子宮内膜のmTORC1活性化と細胞老化が認められた。本研究により、早産マウスモデルで認められる細胞老化の経路がヒトの早産でも関わっていると考えられ、遺伝体質と細菌感染が相互的に作用し早産の発症を誘発している可能性が明らかになった。また、P4と細胞老化の経路を抑制する薬剤による新しい早産予防法の可能性を見出すことができた(Hirota Y. Inflamm Regen 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マウスおよびヒト検体を用いた研究が順調に行われており、その成果として本年度はプロジェクトに関連した論文を複数の英文誌に発表することができた。これらの成果をさらに発展させ、次年度以降の研究の更なる進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進展し成果を上げているため、今後の研究は進展が認められる研究計画を中心に進める予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年10月、p53・FKBP52欠損マウスの出産数が少ないことに加えて母獣による食殺や新生仔死亡が重なり、当初の想定期間内に必要なp53・FKBP52欠損マウスの成体数を得られないことが判明した。解析に必要な生体数を得るために、p53・FKBP52欠損マウスの交配を継続し期間を4か月間延長して行い、以後の予定研究を繰り下げて遂行することが必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成25年度内に必要成体数が得られなかった遺伝子改変マウスの交配を継続する。当該マウスは平成26年7月末までに必要成体数が得られる予定である。平成26年度の研究は当初の研究計画通りに行い、予定の研究費も当初の予定どおりに使用する予定である。
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