研究課題
免疫系は自己と非自己を識別するシステムであり、自己に対する免疫寛容を維持しつつ、非自己を排除する。したがって、免疫寛容が破綻すると自己免疫疾患の発症が誘起される。制御性T細胞(Treg)は自己反応性T細胞を抑制的に制御することによって免疫寛容を維持している。そのため、自己免疫疾患の治療対象としてTregを標的とすることは非常に有効である。本研究において申請者は、マイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析、および質量分析を用いたプロテオーム解析を駆使した、「多層的オミックス解析」によって、自己免疫疾患におけるTregの役割を理解し、機能不全の機序の解明を目指す。申請者はこれまでに、シェーグレン症候群モデルマウスを用いてTregの機能解析を行った。その結果、疾患モデルマウスの末梢リンパ組織では、Tregの数が健常マウスと比較して有意に少ないことが示された。その理由として、疾患モデルマウスではTregの細胞増殖能が抑制されていること、および末梢組織においてnaiveなT細胞からのTregの誘導が抑制されていることが示唆された。今年度はこれらの成果をまとめ、論文作成を行った。また、質量分析を用いたプロテオーム解析について、本学には電場型フーリエ変換質量分析装置Orbitrap eliteが新たに設置された。この質量分析機は当初使用予定であった四重極-飛行時間型質量分析計Q-TOF ultimaと比較して、感度および分解能が10倍以上高い。従って、今後このOrbitrap eliteを使用してプロテオーム解析を行う予定である。Orbitrapはハードウェアおよびソフトウェアが、Q-TOF ultimaとは全く異なり、また学内での使用実績もないため、まず解析システムの理解と解析の条件検討が必要である。今年度は、条件検討に用いるサンプルの準備を行った。
2: おおむね順調に進展している
健常マウスおよび疾患モデルマウスのTreg間における機能の相違について、詳細な解析を行い、その研究成果を論文に取りまとめることができた(投稿準備中)。また、質量分析を用いたプロテオーム解析を行うにあたって、解析の条件検討に必要なサンプルの準備を行った。
本年度は、これまでに得た研究成果のうち、疾患モデルマウスと健常マウスのTreg間における機能の相違について、解析結果を取りまとめ、論文を作成した。また、質量分析を行うにあたって、解析の条件検討に必要なサンプルの準備を行った。したがって、来年度以降は、1)質量分析の条件検討を行う、2)疾患モデルマウスと健常マウスのTreg間における酸化修飾の違いについて、定量的プロテオーム解析を行う。3)これまでに行った、疾患モデルマウスと健常マウスのTreg間での、遺伝子発現の違いについての網羅的解析(トランスクリプトーム解析)と、2)で行う定量的プロテオーム解析の双方の網羅的解析から得られた、原因候補遺伝子あるいはタンパク質について、遺伝子ノックダウン解析やノックアウトマウスの作製などにより病態への影響を検証する。4)臨床サンプルを用いて、動物モデルで得られた結果が実際の患者に反映されていることを確認する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
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