研究課題
平成26年度は、炎症関連 miRNA 遺伝子欠損(KO)マウスを用いて、皮膚創傷治癒過程の表現型解析及び病理組織学的解析を中心に行った。その結果、miRNA KO マウスは、野生型(WT)マウスと比べて、皮膚創傷治癒(無菌性)が遅延した。さらに、発現細胞の同定を行った結果、好中球、マクロファージ及びリンパ球に発現が認められた。さらに、病態との関連を調べるためストレプトゾトシン(STZ)誘導型1型糖尿病モデル及び db マウスとの交配による2型糖尿病モデルを作製、機能解析を行った。その結果、両モデルマウスは、コントロール糖尿病発症 WT マウスに比べ顕著に創傷治癒が遅延した。従って炎症性 miRNA は、糖尿病が原因で惹起される創傷治癒遅延に関与していると推察された。本研究では、皮膚創傷治癒過程の解析の為のイメージング解析の確立も主な目的である。現在、各種 KO マウスとLysM-EGFP マウス(好中球及びマクロファージ特異的に EGFP が発現しているマウス)を交配し、miRNA KO/LysM-EGFP マウスを作製中である。また、採取した皮膚創傷部位を透明化し、深部観察を試みた。皮膚創部は薄い為、透明化は簡単に行えた。しかし、安定した免疫染色の結果を得ることが出来なかった。現在、染色法の改良に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
炎症関連 miRNA KO マウスと他の種々の遺伝子改変マウスを交配させて、新たな病態モデルを確立することが出来た。また、これらマウスを用いた皮膚創傷治癒過程に利用可能なイメージング解析の確立も行うことが出来た。そして、in vitro 及び in vivo イメージングの解析結果を統合することにより、確実な解析結果を得ることが出来ている。さらに、大学院生も加わり、研究は予想以上に進展した。以上の現状を考えて、「②おおむね順調に進展している」と判断した。
平成27年度は、病態下における炎症性 miRNA の機能解析を中心に行う予定である。特に治療法を見据えた応用を開発したいと考えている。具体的には、核酸医薬の開発、細胞移植による治療法の開発である。現在取り組んでいるイメージング解析法は、他分野へも応用可能である。従って、学会発表や研究者同士のコミュニティーを通じて情報交換を行い、利用していただけるように努力する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
American Journal of Pathology
巻: 184 ページ: 2465-2479
doi:10.1016/j.ajpath.2014.05.012