研究実績の概要 |
本年度は、遊離脂肪酸受容体の気道リモデリングへの関与を評価する目的で、長鎖遊離脂肪酸(オレイン酸)投与により生じるERK, Akt, P70S6K, S6のリン酸化の細胞内シグナリング機構を、ヒト気管平滑筋細胞において検討した。 siRNAでFFAR1をノックダウンしたヒト気管平滑筋細胞では、オレイン酸投与によるERK、Aktのリン酸化が有意に抑制されたのに対し、同じく長鎖遊離脂肪酸受容体であるFFAR4をノックダウンした場合には、抑制されなかった。 また、このERKリン酸化は、Gi蛋白阻害剤(百日咳毒素)、Gβγシグナリング阻害剤(gallein)、MEK inhibitor(U0126)の前投与により遮断されたのに対し、Aktリン酸化はGi蛋白阻害剤(百日咳毒素)、Src kinase inhibitor(PP1)、PI3K inhibitor(LY294002)の前投与により遮断された。さらにP70S6KとS6のリン酸化は、MEK inhibitor(U0126)、PI3K inhibitor(LY294002)、mTOR inhibitor(rapamycin)により有意に抑制された。一方、オレイン酸投与により生じるヒト気管平滑筋細胞増殖作用は、MEK inhibitor(U0126)、PI3K inhibitor(LY294002)により有意に抑制された。以上より、FFAR1を介した気管平滑筋細胞増殖機構は、Gi-Gβγ-MEK-ERK経路とGi-Src-PI3K/Akt経路の2経路を介してP70S6Kをリン酸化させる結果生じる可能性が示唆された。 現在、遊離脂肪酸受容体FFAR1およびFFAR4を介した気管平滑筋収縮機構については、Am J Physiol誌に論文投稿しrevise中である。
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