研究課題/領域番号 |
24689073
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
中原 貴 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (10366768)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 再生医学 / 細胞・組織 / 歯学 / エナメル形成 / 細胞培養 / 器官培養 / 分化誘導 |
研究概要 |
本研究は、われわれが新たに提唱する未来の歯科インプラント“再生歯インプラント”の実現に向けたエナメル質の再生、すなわち「バイオエナメル」による歯冠の再生を最終目的とする。 これまでに、新規培養技術「器官再生法」によってマウス歯冠(歯根未形成)を体外培養することにより、歯根-歯周組織ユニットの同時再生に成功している。次いで本研究の進展により歯冠の再生ができれば、この再生歯冠を体外培養することで歯根-歯周組織ユニットの再生が可能となり、歯冠・歯根・歯周組織のすべての完全再生が達成される。 昨年度にひきつづき本年度においても、未分化あるいは機能性のエナメル上皮細胞が豊富に存在すると考えられ、ヒトを対象とした動物モデルとして有用なミニブタの胎仔を実験に供した。胎仔頭部から乳臼歯歯胚に由来するエナメル上皮組織ならびに歯乳頭を完全に摘出し、個別に初代培養した。そして、outgrowthした敷石状細胞を増殖させて、前者からはエナメル上皮由来細胞、後者からは血管内皮細胞を得た。そして、RT-PCR、蛍光免疫染色、ウェスタンブロット法、透過型電子顕微鏡による多角的な解析により、エナメル上皮由来細胞が複数のエナメル蛋白を活発に産生する分化段階にあるエナメル芽細胞であることを同定した。 また、われわれは昨年、培養シャーレから目的の細胞だけを選択的に分離できる新たな細胞分離技術「セル・フィッシング法」を報告し(Differentiation 85(3): 91-100, 2013)、多くのメディアでも報道された(日経産業新聞、新潟日報、日本歯科新聞など)。本技術を用いることで、並行して進めるES細胞から分化誘導した様々な細胞集団から、上皮細胞群だけを選択的に分離する実験を検討しており、歯原性上皮細胞の分離・同定を図る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度にひきつづき、エナメル質形成細胞の候補細胞となる歯原性上皮細胞について、ミニブタ胎仔の乳歯歯冠およびラット歯根膜由来のマラッセ上皮残遺細胞などの解析を進めている。さらに、分化誘導によって様々な細胞が生じるES細胞からは、細胞の形態学的な特徴に基づいて選択的に目的の細胞集団だけを分離できる新規細胞分離技術「セル・フィッシング法」を駆使して、歯原性上皮細胞の分離・同定を図る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に確立した新規細胞分離技術である「セル・フィッシング法」は、実験動物やヒトを問わず採取組織の初代培養から目的の細胞だけを選択的に分離することができる。そのため、これまでに分離培養に成功しているミニブタやラット由来の歯原性上皮細胞のエナメル形成能を詳細に解析すると同時に、ES細胞由来の新たなエナメル質形成細胞の候補細胞の収集を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の遂行にあたり、消耗品の購入が予定使用額に達する前に完了したものの、当該年度の研究遂行に支障がなかったため、次年度使用額に計上することにした。 本研究で使用している複数の歯原性細胞さらにES細胞の培養維持のために、主に培養シャーレやピペットなどの培養器材や培養液など多額な消耗品の購入が必要となるため、次年度の研究費と合わせて最終年度の実験を円滑に行えるように過不足ない研究費の使用を計画している。
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