研究課題/領域番号 |
24700004
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 佑輔 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40581591)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフ / アルゴリズム |
研究概要 |
過去に提案されている多項式時間アルゴリズムの多くは,「動的計画法に基づくもの」と「双対概念を利用したもの」の2種類に大別することができる.一方で,近年提案されているグラフマイナー理論に基づく多項式時間アルゴリズムは,これら2種類の枠組みに当てはまらない.本研究の目的は,グラフマイナー理論に基づく難解なアルゴリズムと,既存の枠組みである「動的計画法」や「双対概念」との関係を明らかにすることである.グラフマイナーアルゴリズムでは,「木幅」と「グリッド」と呼ばれる二つの概念が重要な役割を果たすので,研究の第一歩としてこれら二つの概念を双対の意味で解釈することを試みた.本年度の研究では「大きな木幅を持つグラフは大きなグリッドマイナーを含む」という関係について,従来の結果を改良する結果を与えた.具体的には,「2 の Θ(r 2 log r) 乗の木幅を持つグラフがサイズ r グリッドマイナーを持つこと」を示しており,これは Robertson, Seymour, and Thomas によって1994年に与えられた 2 の Θ(r 5) 乗のバウンドを改良するものである.また,グラフマイナーアルゴリズム自体の研究として,入力グラフのクラスを制限した場合における最大辺素パス問題に対する近似アルゴリズムや,S-cycle パッキング問題に対する固定パラメータアルゴリズムを提案した.それ以外に,与えられたグラフが k-リンク的かどうかを判定する問題に対するアルゴリズムを提案した.この問題は点素パス問題と深く関わる問題であるが,提案アルゴリズムはグラフマイナー理論に基づくものではなく,さらに「動的計画法」や「双対概念」も利用していないという意味で興味深いものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木幅とグリッドマイナーの大きさの関係を明らかにすることが本年度の主要な目的であったが,既存の Robertson, Seymour, and Thomas (1994) の結果を改良したことが,大きな成果であると考えられるため.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果である木幅とグリッドの関係を利用し,グラフマイナーアルゴリズムの簡略化・高速化・最適化問題への応用を行う.最適化への応用を考える際には,まずグラフのクラスを制限するなど,特殊ケースにおける問題を解くことから開始し,その後一般化を目指す. また,緩和された最大最小定理を持つ問題に対するアルゴリズムの研究を行う.グラフ理論において盛んに研究されている Erdos-Posa Property は最大最小定理を緩和した形をしている.具体的には,Erdos-Posa Property を持つ様々な対象のパッキング問題やカバーリング問題を解き,それらに対するアルゴリズムを通して,緩和された最大最小定理がアルゴリズム中でどのように利用できるかを調べる.ここで,構築するアルゴリズムは,多項式時間アルゴリズムに限らず,固定パラメータアルゴリズム(FPT)も対象とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の発表および情報収集のための出張費が主な支出となる.海外出張35万円×3,国内出張5万円×4と見積もっており,その他の研究費は書籍などの物品にあてる.
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