圧縮センシングに関し,統計力学的視点に基づいた新たな疎信号復元アルゴリズムの開発を中心に研究を行った.その他,データ疎性に関わる問題として,MRIスペクトルの疎信号復元アルゴリズム・深層学習における疎性を利用した学習アルゴリズム・ネットワーク上の疫病感染の研究等を行った. 圧縮センシングの疎信号復元アルゴリズムとして重要なものとして,Approximate Message Passing(AMP)アルゴリズムと呼ばれるものが2009年に開発されている.このアルゴリズムは高速に実行出来,かつアルゴリズムの収束条件も理論的に判明しているものとして重要であるが,信号観測過程を表現する「観測行列」とよばれるものにある種の仮定を置いたものでアルゴリズムが導出されている. そこで,そのような仮定をはずした上で同種のアルゴリズムが構築可能であるかを考察した.具体的には,無線通信系として知られるCDMA通信系での干渉除去の理論を疎信号復元に応用することで,AMPの一般化が可能であることを示した.さらにこのアルゴリズムが元々のAMPよりも良好な復元性能を持つことを数値実験で確認した.本研究については国際会議論文及び特許等で一部成果が公表されている.ただし成果の論文化が遅れてしまい,研究期間中に出版が出来なかった為,早急に出版することを予定している. MRIスペクトルの復元アルゴリズムに関しては現在も進行中である.これは他の科研費の科目とも重複する研究であるが,結果については今後随時公表予定である. また,データ疎性を利用した深層学習の学習アルゴリズムの改良を指導する学生と共同で行った.具体的には,persistent contrastive divergence法という学習アルゴリズムを改良することで,深層学習器の画像認識の認識率の改良を試みた.この成果についても早急に公表する予定である.
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