研究課題/領域番号 |
24700015
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山中 脩也 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (90548877)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高精度計算 |
研究概要 |
本研究は初等関数や特殊関数に対して,高可搬・高精度・高信頼・高速という4つの特徴を持つ数値計算アルゴリズム(4H-Algorithm)の設計法を構築することである.初年度である平成24年度は四則演算の 4H-Algorithm とエラーフリー変換を組み合わせ,また,その誤差解析を行なう事で双曲線関数と三角関数の 4H-Algorithm を構築する事を目的とした.浮動小数点数を用いた数値計算システムで双曲線関数を計算する際は,桁を有限桁しか保持する事ができないことが原因となり大きなキャンセレーションが発生する.この問題に対し,キャンセレーションの根本的原因となる exp(x)-1 の部分に対し,計算法の中で計算することなく事前に保持することで大きなキャンセレーションを回避した.これにより双曲線関数は従来の高速性を失うこと無く高精度な計算を行なう事ができるようになった.また,三角関数の計算においては,入力値が非常に大きな値であっても出力値は小さな結果になりうるため,入力値の引き戻しを行なう必要がある.しかしこの引き戻しの工程にはほぼ確実に計算誤差が混入してしまい,その結果出力値が小さいような入力では大きく間違った結果を返すことになっていた.この問題に対して,内部で必要な場所に必要な精度だけの高精度計算を用いた引き戻しを行なう事で,この問題を回避した.これには円周率の値を高精度に保持する必要があったが,エラーフリー変換に基づく方法を用いて,高精度な結果を得ることができるように設計を行なった.また,両関数においてそれらで発生するすべての誤差を考慮した誤差解析を行ない,これらの 4H-Algorithm を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画分については,申請書に書いてある関数について構築が完了しているため,滞り無く順調に進展していると言える.来年度以降も研究計画に従って研究を推進したい.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は初等関数や特殊関数に対して,高可搬・高精度・高信頼・高速という4つの特徴を持つ数値計算アルゴリズム(4H-Algorithm)の設計法を構築することである.二年目である平成25年度は,平成24年度に作成した双曲線関数と三角関数の構築で得た知識と,四則演算の 4H-Algorithm ,エラーフリー変換を組み合わせ,また,その誤差解析を行なう事で逆関数,特に逆双曲線関数と逆三角関数の 4H-Algorithm を構築する事を目的とする.平成25年度も平成24年度と同様に,精度保証付き数値計算研究グループとして世界最大規模である,早稲田大学の大石研究室と,その周辺の研究室との連携を図り,積極的に研究計画を推進して行きたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
提案した手法の成果発表や研究打合せの旅費(国内・国外)に平成24年度と同様に利用させていただきたい.また,平成24年度に構築した研究者同士の繋がりにより講演会や研究会を開催し,その会議費用や講演謝金の費用に利用させていただく予定である.
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