研究課題/領域番号 |
24700015
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山中 脩也 早稲田大学, 理工学術院, 研究院講師 (90548877)
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キーワード | 高精度計算 / 誤差解析 / 精度保証付き数値計算 |
研究概要 |
本研究の目標は,初等関数や特殊関数に対して,高可搬・高精度・高信頼・高速という4つの特徴を持つ数値計算アルゴリズム(4H-Algorithm)の設計法を構築することである.二年目である平成25年度は,平成24年度に達成した双曲線関数と三角関数の構築で得た知識と,四則演算の 4H-Algorithm・エラーフリー変換を組み合わせ,逆双曲線関数と逆三角関数の 4H-Algorithm を構築した.これら逆関数の計算法は,従来利用していた浮動小数点数を和の形に分解する手法を直接利用することができず,これまで構築した技術を再利用する事が非常に困難であった.この問題に対して,浮動小数点数を乗算の形に分解する新たな手法を考案し,従来利用していた和の形に分解する手法と対応させることで,高精度のまま計算を行なえるだけでなく,これまでに構築してきた技術を部分的に利用する事が可能となった.この乗算の形に分解する技術をベースとして逆関数計算の誤差解析を行ない,逆双曲線関数と逆三角関数の計算法の 4H-Algorithm の構築を行なった. また,これまでに考案した技術を結集させ,特殊関数の 4H-Algorithm の考案に向けた基礎基盤の構築を行なった.特殊関数の多くは,四則演算・初等関数・積分の組み合わせで計算されているが,4H-Algorithm を達成するためには,計算法の内部で出力結果の精度より高精度な結果を与える機能が必要となる.この問題に対し,倍精度演算のみで約八倍精度を達成する高速なフォーマットを提案した.現在広く利用されている DD/QD フォーマットと比べて,表現能力は数ビット程度劣るものの,内積計算などの実行時間において約2倍の高速化を達成した.基礎的な部分での高速化の達成により,特殊関数の計算法の構築においても非常に大きな役割を果たすことが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画分については,申請書に書いてある関数計算法の構築が完了しており,また,特殊関数計算法の構築の基盤が準備できているため,滞り無く順調に進展していると言える.来年度以降も研究計画に従って研究を推進したい.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は初等関数と特殊関数に対して,高可搬・高精度・高信頼・高速という4つの特徴を持つ数値計算アルゴリズム(4H-Algorithm)の設計法を構築することである.三年目はこれまでに構築した技術を基礎とし,いくつかの特殊関数計算法の構築を目指す.特殊関数は積分計算を基礎とすることが多いため,高精度かつ高信頼な積分の計算技術を持つ,早稲田大学の大石研究室と,その周辺の研究室と密な連携を図り,積極的に研究計画を推進して行きたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた海外出張に,学内業務等により参加する事ができなかったため. 今年度は本研究課題に関連する国際会議が多く開かれる年度であるため,そちらへの参加旅費等に使用させて頂く予定.
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