研究課題/領域番号 |
24700017
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鳥取環境大学 |
研究代表者 |
西澤 弘毅 鳥取環境大学, 経営学部, 講師 (60455433)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代数 |
研究概要 |
論理を拡張した場合に、元のストーン型双対性から拡張後のストーン型双対性を構成できるか、ということを明らかにすることが本研究の目的である。 平成24年度は、ストーン型双対性の前段階として、表現定理の一般形について分析を試みた。ブール代数や、それに単項演算子を加えた様相代数についての表現定理は、すでによく分析されている。そこで本研究では、二項演算子を持つ代数としてクウォンテールと完備べき等左半環に着目し、これらの表現定理を一般化することを試みた。 ところが、そもそもクウォンテールや完備べき等左半環の表現定理として妥当な表現定理とは何か、ということが明確でないことが明らかになった。1993年に Brown と Gurr が与えた定理は、クウォンテールを二項関係で表現するという定理であったが、実際には積の単位元を恒等関係で表現できていなかった。また、1994年に Valentini が与えたクウォンテールの関係表現定理は、順序を二項関係の包含関係で表現できていなかった。 そこで本研究では、これらの表現定理の修正を行った。具体的には、積の単位元を恒等関係で表現でき、順序を包含関係で表現できるような、クウォンテールの関係表現定理を与えた。また、その類似例として、完備べき等左半環を二項多重関係で表現する表現定理を与えた。 その結果、これらの表現定理は一般のクウォンテールや一般の完備べき等左半環について適用できるわけではなく、その束部分について、なんらかのべき集合と同型であることが十分であることが分かった。これは、まさにブール代数の表現定理と、二項演算を持つ代数の表現定理の間に深い関係があることを示しており、本研究の目的につながる知見と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画では、平成24年度には、異なる多値論理の間でのストーン型双対性について調査を進める予定であったが、まずは、ストーン型双対性の一般化について研究するための前段階として、二項演算子を持つ代数の表現定理を一般化することを試みた。 ところが、そもそもクウォンテールや完備べき等左半環など二項演算子を持つ代数の表現定理として妥当な表現定理とは何か、ということが明確でないことが明らかになったため、本研究では、これらの表現定理の修正を行った。具体的には、積の単位元を恒等関係で表現でき、順序を包含関係で表現できるような、クウォンテールの関係表現定理を与えた。また、その類似例として、完備べき等左半環を二項多重関係で表現する表現定理を与えた。 得られた結果は多値論理に関する結果ではないため、当初の計画とは異なるが、最終的には表現定理の一般化に関する議論は避けては通れないため、得られた結果は最終的に必要な内容であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のアプローチは、異なる真偽値からなる多値論理どうしを比較できるものでなければならない。そこで、従来の真偽値や部分空間の概念自体を抽象化して統一的に扱うために、ファイブレーションの概念を用いる。ただし、過剰な一般化によってストーン型双対性の保存性を証明できなくなった場合には、その原因を精度よく突き止めて方針を修正することが必要となる。そこで、ストーン型双対性の保存について段階的に検討することにする。 ファイブレーションは、逆像を持つ代数系を抽象化したものであり、近い概念として余ファイブレーション(順像を持つ代数系の抽象化)、双ファイブレーション(逆像と順像の両方を持つ代数系の抽象化)がある。逆像や順像は部分空間の概念と深い関係があるため、これらを用いると部分空間や位相の概念を抽象化することができる。部分空間とは2値論理の場合の命題にあたるものなので、この抽象化により真偽値の概念も抽象化することとなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、異なる多値論理についての調査をする前に表現定理の一般化について研究を進めたため、多値論理についての調査費用を平成25年度以降に使用することとなった。 平成25年度は、いろいろな代数系についてファイブレーションでどのような定式化ができるかを一通り調査することが必要である。具体的には、完備上半束、完備ハイティング代数、ブール代数、有界分配束、などの定式化を検討・比較する。 前年度の結果に基づいて、双対随伴よりも強い性質について保存されるための必要十分条件も明らかにする。たとえば、忠実左随伴を持つ双対随伴、充満忠実左随伴を持つ双対随伴、充満忠実左随伴と充満忠実右随伴を持つ双対随伴(すなわち双対性)、などである。 このように段階的に研究を進める中で、弱い性質は保たれるが強い性質は保たれないような論理が出てくることが考えられる。例えば、4値の場合から3値の場合へ双対随伴は保たれるが、忠実左随伴を持つ双対随伴は保たれないことが考えられる。それでも結果はある程度有効である。例えば、2値命題論理のストーンの表現定理を示すには、忠実左随伴を持つ双対随伴だけあれば十分である。
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