研究課題/領域番号 |
24700017
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
西澤 弘毅 神奈川大学, 工学部, 准教授 (60455433)
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キーワード | ストーン型双対性 / 表現定理 / 多値論理 |
研究概要 |
論理を拡張した場合に、元のストーン型双対性から拡張後のストーン型双対性を構成できるか、ということを明らかにすることが本研究の目的である。 平成24年度は、ストーン型双対性の前段階として、表現定理の一般形について分析を試み、既存の表現定理の修正を行った。具体的には、積の単位元を恒等関係で表現でき、順序を包含関係で表現できるような、クウォンテールの関係表現定理を与えた。また、その類似例として、完備べき等左半環を二項多重関係で表現する表現定理を与えた。 平成25年度には、一つのストーン型双対性から別のストーン型双対性を導く構成を与えるという最終目的の前段階として、一つの随伴から別の随伴を導く構成を明らかにすることを目標とした。その結果、半束の圏と完備束の圏の間の随伴から、べき等半環の圏とクウォンテールの圏の間の随伴を生成する構成を明らかにできた。さらにそれを一般化し、T代数上の半束の圏とT代数上の完備束の圏の間の随伴を与える構成も与えた。 また、すでに知られている modal algebra と descriptive general frame の間のストーン型双対性を参考に、modal algebra と Kripke frame の間のストーン型双対性の存在の可能性について調査した。その結果、modal algebra の圏には始対象がある一方で、Kripke frame の圏には終対象がないことが分かった。したがって、これらの間に双対性は成り立たない。しかし、この二つの圏の間には、典型的な逆向きの関手の対は存在していた。canonical frame を与える関手と complex algebra を与える関手である。これらの関手は modal algebra の Kripke 完全性を示す際には実際に使われており、まったく無意味な関手ではなかった。したがって、なんらかの universal property を持つのではないかと考えられる。それを明らかにすることは次年度以降の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の一つ目の貢献は、半束の圏と完備束の圏の間の随伴から、T代数上の半束の圏とT代数上の完備束の圏の間の随伴を与える構成を与えたことである。これは随伴から随伴の構成であり、1つのストーン型双対性から別のストーン型双対性を導く構成を与えるという最終目的の前段階として重要な結果である。 もう一つは、modal algebra と Kripke frame の間に、双対性ではないが関手の対が存在するという調査結果である。これも、二つの圏の間の関係として、双対性、単射単位を持つ随伴、普通の随伴、関手対、などのさまざまな段階があり得る中で、modal algebra と Kripke frame の間には双対性はないが単射単位をもつ関手対はある、という事実を確認したことで、まずは一定の意味があると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のアプローチは、異なる真偽値からなる多値論理どうしを比較できるものでなければならない。そこで、従来の真偽値や部分空間の概念自体を抽象化して統一的に扱うために、ファイブレーションの概念を用いる。ただし、過剰な一般化によってストーン型双 対性の保存性を証明できなくなった場合には、その原因を精度よく突き止めて方針を修正することが必要となる。そこで、ストーン型双対性の保存について段階的に検討することにする。 ファイブレーションは、逆像を持つ代数系を抽象化したものであり、近い概念として余ファイブレーション(順像を持つ代数系の抽象化)、双ファイブレーション(逆像と順像の両方を持つ代数系の抽象化)がある。逆像や順像は部分空間の概念と深い関係があるた め、これらを用いると部分空間や位相の概念を抽象化することができる。部分空間とは2値論理の場合の命題にあたるものなので、この抽象化により真偽値の概念も抽象化することとなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、異なる多値論理についての調査をする前に表現定理や関手対の一般化について研究を進めたため、多値論理についての調査費用を平成26年度以降に使用することとなった。 平成26年度は、いろいろな代数系についてファイブレーションでどのような定式化ができるかを一通り調査することが必要である。具体的には、完備上半束、完備ハイティング代数、ブール代数、有界分配束、などの定式化を検討・比較する。 前年度の結果に基づいて、双対随伴よりも強い性質について保存されるための必要十分条件も明らかにする。たとえば、忠実左随伴を持つ双対随伴、充満忠実左随伴を持つ双対随伴、充満忠実左随伴と充満忠実右随伴を持つ双対随伴(すなわち双対性)、などである 。このように段階的に研究を進める中で、弱い性質は保たれるが強い性質は保たれないような論理が出てくることが考えられる。以上のように研究を進めるための資料代や旅費に残額を充てる。
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