研究課題/領域番号 |
24700028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬谷 誠二 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40378831)
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キーワード | 分散プロセス計算 / プログラミング言語 / コード移動 / プログラム解析 |
研究概要 |
平成25年度には,主に以下の3つの研究開発を行った. (1) 高水準アンビエント記述(アプリケーションプログラム)に対するセキュリティポリシー記述仕様の確立:前年度に開発した高水準記述ガ可能なJavaフレームワーク上で記述された分散アプリケーションに対し,移動先で実行され得るケーパビリティの指定(コードからの抽出が容易でない部分の事前埋め込み)と,受け入れ側のセキュリティポリシーの指定方法の仕様記述の設計を行った. (2) 低水準コードの解析手法:(1)の高水準フレームワーク上で記述されたJavaプログラムは,標準的なJavaコンパイラによって低水準なバイトコードへと変換されるが,アプリケーション実行中の安全性の確保の実現には,そのような低水準コードの実行時解析・検証が必要となる.本課題で開発しているアンビエント計算機能を用いたJavaコードの特性を考慮した簡潔な解析手法,および解析を実装するためののバイトコード操作ツールの開発を行った. (3) 高水準言語に組込まれたアンビエント機能のセキュアな実行のためのフレームワークの開発:アンビエントにおいて個々の移動動作を表すケーパビリ ティは,処理系のセキュリティを確保するための重要な役割を持っており,その正しくかつ効率良い実行方式の実現は重要な課題である.そのような実行方式の一つとして,動的な機能をそなえた汎用プログラミング言語へのコンパイルによる機能の実装を行った.これまでの研究成果であった解釈実行による方法と比べ,実行速度の改善が見られ,かつ,形式的に定義された変換方式を提供することで,セキュアな実装が正しく行われていることの確認がより容易になっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案フレームワークを用いて書かれた分散プログラムの安全性を確保するための拡張機能の仕様設計は順調に進んでいる.また,その実装忠実に安全な実行を行うためのプログラム実行基盤を実装するための要素技術の開発も順調に進行中である.また,拡張機能を実装するための種々の要素技術の開発も並行して行っている. これらの成果をもとに,全体として開発者の望む「正しい」動作を信頼のおける処理系上で実現する分散実行環境の開発に取り組むことができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下のように研究を進める予定である. (1) 高水準アンビエント記述上のセキュリティ仕様記述の設計・実装:25年度に引き続き,セキュリティ拡張機能の設計・実装を行う.仕様の検討にあたっては,低水準コードの解析性能を考慮し,柔軟性と実行効率の両面から再検討を行い,改良・実装詳細化を進める. (2) 安全性を確認するための低水準コード解析手法の構築:システムが全体として満たすべき性質の解析・検査を実行時に効率良く行うための方法を開発する. (3) フレームワーク全体の統合と評価: これまでに開発してきた個々の要素技術の統合を行い,全体としての利便性,実行効率についての評価を行う.これには,実際的な応用アプリケーションの開発も含まれる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定したいた高性能PCの購入を秋以降に再検討したところ,想定していたスペックを備える,より安価なノートPCで要求を満たすことができると判明したため. また,当初予定していた旅費支出の一つがキャンセルとなった. 最終年度のため,成果発表の機会が前年度までより多くなる可能性があり,そのための旅費費用に充てたい.
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