研究課題/領域番号 |
24700029
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
眞鍋 雄貴(真鍋雄貴) 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教 (20625339)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ソフトウェアライセンス / 再利用 / ソフトウェア工学 / オープンソースソフトウェア |
研究概要 |
今年度の成果として,(1)オープンソースソフトウェアにおける実例に基づき,ソフトウェアライセンス(以降,ライセンス)間の関係の解析を行った.また,ライセンス間の関係解析における枠組みを応用し,(2)過去の動作と現在の動作を比較することによって,今後の振る舞いを予測するという手法を考案した.以下,各成果について説明する. (1)では,あるライセンスの成果物を別のライセンスで配布できるとき,それらの間にある関係を包含関係と定義し,既存のオープンソースソフトウェア内に現れる包含関係を抽出し,まとめた.本調査では,Linuxディストリビューションの一つであるFedora17で管理されるソースパッケージ集合を既存のオープンソースソフトウェアの集合とみなし,多数のパッケージに登場する包含関係を抽出した.この成果によって,ライセンスの条項間に出現する単語間の関係を解析する際の基盤となる知見を得ることができ,以降のライセンスのモデル化やライセンスプロトタイプの構築に貢献できよう.また,この知見は,法学知識のないソフトウェア開発者がソースファイルやライブラリを選択する際,ライセンスを考慮するコストを削減できる可能性を持つ. (2)では,オブジェクト指向プログラムを対象として,記録した実行履歴と現在の実行とを比較することでオブジェクトの振舞いを予測する手法を提案し,実際のソフトウェアで評価した.その結果,提案手法によって,多くの場合において,呼び出し文の系列が予測可能であることを示した.本研究課題では,実例に基づきライセンス間の関係を解析することが目的であるが,本成果はこのアプローチがアプリケーションの振る舞いに応用することができることを示しており,本研究課題で得られた知見が他の分野に適用できる可能性を示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度中の計画としては,オープンソースソフトウェアにおける実例に基づき,ソフトウェアライセンス間の関係の解析とソフトウェアライセンスの条項に出現する単語間の関連を明らかにすることであった.これらを達成するため,(1)ライセンスに関する情報収集 (2)オープンソースソフトウェアの収集,(3)ライセンス間の関係解析をa)ソースファイルのライセンス特定b)各オープンソースソフトウェアパッケージのライセンス特定c)ライセンス間の関係解析の三段階で行う,(4)ライセンスのモデル決定,(5)既存ライセンスのマッピング方法の決定,(6)ライセンスモデルのフィルタリング手法の開発を行う予定であった. このうち,(3)ソフトウェアライセンス間の関係のうち,(b)ソフトウェアとソースファイル間のライセンスの関係を用いて,ライセンス間の関係について調査することができた.しかしながら,(3)(c)におけるソフトウェアライセンス間の関係における単語の関係調査以降を実現するに至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
25年度では,24年度中に達成できていない(3)(c)ライセンス間の関係解析の残りである単語間の関係解析,(4)ライセンスのモデル決定,(5)既存ライセンスのマッピング方法の決定,(6)ライセンスモデルのフィルタリング手法の開発を優先して行う予定である.これらは主に24年度の成果によって包含関係を持つことが分かったライセンスについて,それらに含まれる各条項中の動詞や名詞に着目することで,分類を行う.解析対象となるライセンスの条項については,SPDX License List(https://spdx.org/licenses/)にあるライセンス記述を利用する予定である.次に,各分類を構成する条項に現れる頻出する動詞や名詞の集合をアイテムセットマイニングにより抽出することで,各分類を特徴づける条項構成パターンを作成する.ここまでの成果については,国内会議,もしくは国際会議にて発表し,研究の洗練を目指す予定である. 次に,25年度中に行う予定としていた,(7)ライセンスプロトタイプ作成に向けた情報収集,(8)ライセンスプロトタイプ作成支援環境の試作,(9)ライセンスプロトタイプ作成支援環境の評価を行う.本研究におけるライセンスプロトタイプとは,各条項に定義される含むべき動詞・目的語の集合を要素とする集合とする. (7)では再利用に関連する要求事項を主に調査する.(8)では(4)~(6)にて分析した条項において,同一の分類とみなせる条項群について,単語間の関係と包含関係から同一の要求に対する表現の強さを単語ごとに決定し,要求と構成パターンの関係を決定する.(9)においては,構築したライセンスプロトタイプ作成支援環境にて,包含関係に登場しなかったライセンスをどこまで再現できるかによって評価する.ここまでの成果を国内会議,もしくは国際会議で発表する予定とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究方針に挙げた,(3)(c)から(6)における成果,また(7)から(9)における成果を国際会議もしくは国内会議にて報告するため,学会参加費,並びに渡航費用として旅費を使用する. (7)ライセンスプロトタイプ作成に向けた情報収集に用いるノートパソコンと調査すべき書籍の購入費用として物品費を使用する.
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