本研究課題の目的は,オープンソースソフトウェア(以降,OSS)における実例に基づき,ソフトウェアライセンス(以降,ライセンス)の骨組みとなるライセンスプロトタイプを作成する環境を構築することにあった.本年度の成果は以下のとおりである. 1.Fedora Core19のソースパッケージを使用したOSSライセンス間の関係解析を,海外の研究者と共同で行うことにより洗練させた.昨年度はソースパッケージ中のメタデータに記載されているライセンス名とソースファイルにて指定されているライセンス名から,あるライセンスのファイルはどのライセンスで再配布できるかという関係を抽出した.本年度は,各主要なOSSライセンスで配布されているパッケージにはどのようなライセンスのソースファイルが含まれるかを調査した.その結果,様々なライセンスが含まれる場合がある一方,ほぼ単一のライセンスのソースファイルのみ持つような場合があった. 2.他のコードと重複するコード片であるコードクローンに対する周辺コード(コードクローン中に存在する変数のデータフロー上に出現するフィールド変数,引数を持たないメソッド呼び出し,コードクローンを含むメソッドの仮引数(以上,外部要素)とコードクローンを含む制御ブロックのうち,最内にあるブロック)を抽出,表示するツールの作成と,これを用いた7つのOSSの調査を行った.その結果,コードクローンであっても外部要素が異なっている場合や異なるコード片であっても外部要素が同一である場合を示した. これらの研究成果では,ライセンスプロトタイプの構築までは至らなかった.しかし,ライセンス間の関係を実際の用例に基づいて,より詳細に調査することができ,また,メタデータを対象とする点で研究範囲を広げることも出来た.これらの成果は今後のOSS開発をより発展させるために有用であったと考える.
|