2014年度以来、データレプリケーションの所要時間の短縮、および、所要時間の予測精度の向上を目指し、マルチパス TCP 転送のスループット予測技術の改良に取り組んで来た。2014年度は、NTT が制作した高速なソフトウェア OpenFlow スイッチである Lagopus による実験環境を構築しようと試みたが、検証と部品調達に予想以上の時間を要し、残念ながら年度内に完成させることができなかった。2015年度は、OpenFlow による実験環境を構築させ、既存の TCP スループット予測技術をそのまま利用した場合に比べて大幅に予測精度を向上させることの可能な予測技術を構築し提案することが出来た。
既存の手法をそのまま用いた場合、複数のパスを均等に利用することが出来ず、結果的に一番最初に確立されたコネクションの影響を過大に受けてしまう。これは、できる限り既存のネットワーク装置との互換性を重視するというマルチパス TCP の設計方針から来るものであり、プロトコル自体を変更することは難しい。そのため我々は、マルチパス TCP を使ってマルチパス TCP の学習データを収集するのではなく、それぞれの経路に単体の TCP フローを流し、それに基づいて学習データを収集し予測モデルを構築するという手法を実現した。Lagopus と dummynet を用いて広域 SDN 環境を模した実験環境での評価実験で、我々の提案手法は既存の手法から大幅な精度向上(47.5% -> 77.7%)をもたらすことが可能であること、また、既存手法の1000分の1のサイズのプローブ転送で同程度の予測精度が実現可能であることを確かめた。
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