研究課題/領域番号 |
24700036
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
桑原 寛明 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (30432222)
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キーワード | ソフトウェア工学 / 情報流解析 / 型システム / 型エラースライシング / ソフトウェア開発支援 |
研究概要 |
本年度は、例外処理付きオブジェクト指向言語向けの情報流解析のための型システムを対象として、式を単位とする細粒度な型エラースライシング手法の構築を進めた。前年度までは手続き型言語向けの情報流解析と型エラースライシングを扱っていたが、これを例外処理付きオブジェクト指向言語向けに拡張することにより、実際のソフトウェア開発に用いられているプログラミング言語に対して情報流解析と型エラースライシングの実現を可能とする。 また、情報流解析によって機密データを漏洩する可能性のあることが判明したプログラムは修正しなければならないが、一般的に修正方法は自明ではない。そこで、可能な修正方法を求めて列挙する手法を提案した。この手法により、開発者が修正方法を一から考える必要はなくなり、列挙された修正方法を比較して適切な修正方法を選択し、その方法に従ってプログラムを修正すればよい。プログラムの修正方法の列挙については本来の研究計画には含まれていなかったが、本研究の目的である機密データを漏洩しない安全なソフトウェアの開発支援の実現に寄与する重要な結果である。 昨年度に開始した、提案手法を実現するツールの開発に向けたプログラム解析の基盤環境の構築はおおよそ完了した。提案手法についてはまだツールとして実装できる状態ではないが、プログラム解析基盤環境の性能や使い勝手をテストするために基盤環境上にコーディング検査器などの実装を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案手法の正当性を数学的に証明することが本研究の一つの特徴であるが、予想していた通り困難な点が多く長期間を要しており、計画していた他の項目の進捗に対して影響が出ている。一方で、本来の計画には含まれていなかったが研究目的の実現には寄与する進捗も得られたため、全体を鑑みてやや遅れていると判断した。進捗が極端に遅れているわけではなく、遅れている分の回復は可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題は明確であるため、実施計画に基づいて研究を推進する。その際、進捗状況に及ぶ影響を軽減するために、必要となる数学的証明を概略のみにとどめ他の研究項目に注力するといった対応を検討する。提案手法をソフトウェア開発者が使える形として具体化することが重要であるため、ツールの開発にも注力することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究打ち合わせのために計画していた出張の中で、スケジュールの都合からキャンセルされたものがあった。そのため次年度使用額が発生した。 次年度使用額を含む研究費については、主に研究発表あるいは研究打ち合わせのための出張旅費および関連書籍などの物品費に充てる計画である。
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