本研究では,並列計算機上で動作する並列アプリケーションの作成や並列計算機自体の設計において,素早く有効な性能解析を行うために必要な並列計算機用通信シミュレータの軽量化およびその高精度化に関する研究を行った. 研究代表者らが提案している軽量なフローベース・シミュレータの開発を行った.既存のサイクルベース・シミュレータの改良もあわせて行った.実機に近いという意味での精度面では,現在でもサイクルベース・シミュレータの方が高く,今後とも継続した改良が必要である. 大規模並列計算機の国際的な性能ランキング Top500 に記載されている約40%のシステムで使われているものと同じ Infiniband を用いて小規模なネットワーク実験環境を構築し,並列計算機向けのネットワーク性能評価用ベンチマークによる性能測定実験を行った.実験により,実機ネットワークの性能や振る舞いを特徴付ける遅延情報等を確認することができた.これらをシミュレータに組み込むことによる精度向上の目処は現時点ではまだたっていないが,今後も継続して取り組んでいく. シミュレータと並列計算機実機との振る舞いの違いを調べるため,「京」コンピュータから通信ログを取得し,他の研究プロジェクトにて提案されている通信可視化ツール CLV (Communication Log Viewer) を使って比較した.シミュレータとしては,精度不足等の理由から,提案しているフローベース・シミュレータではなく,改良したサイクルベース・シミュレータを用いた.この比較結果は,次年度中の公表を目指して,論文として投稿中である.
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