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2012 年度 実施状況報告書

ヘテロジニアスマルチコアプロセッサと自動並列化コンパイラの協調による低消費電力化

研究課題

研究課題/領域番号 24700055
研究種目

若手研究(B)

研究機関電気通信大学

研究代表者

和田 康孝  電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 助教 (40434310)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードヘテロジニアスコンピューティング / 自動並列化コンパイラ / 低消費電力
研究概要

高性能かつ低消費電力な計算機システムを実現するために,近年では,性能の異なるプロセッサコアやアクセラレータを複数台・複数種類搭載するヘテロジニアスなシステムが用いられる様になってきている.しかしながら,このようなシステムに向けた並列プログラムの開発は多大な時間とコストを要するため,この上さらにDVFSやクロックゲーティングなどの低消費電力化のための最適化を施すのは難しい.本研究課題は,低消費電力化手法を備えた自動並列化コンパイラ技術をヘテロジニアスマルチコアに適用することにより,高い実効性能と低い消費電力を両立するコンピュータシステムの構築を目指すものである.
本年度は,既存のタスクスケジューリング手法をベースとしたDVFS・クロックゲーティング・パワーゲーティングの適用とその効果に関する初期評価,実アプリケーションへの自動並列化技術の適用に関する検討やヘテロジニアスな計算機環境で用いられるアクセラレータの低消費電力化に関する検討などを行うとともに,実ハードウェアおよびシミュレーションにてヘテロジニアスな計算機環境の性能・消費電力評価を行うための実験環境整備を進めた.
従来の低消費電力化手法では,DVFS等の適用によりプログラム全体の消費電力量を低く抑えられたとしても,プログラム構造によって実行時の最大電力と最小電力の差が大きくなってしまうことが確認できた.この様な状況では電源への負荷が大きく,発熱の面からも余分な消費電力が発生する可能性があるため,これを抑制する必要がある.しかし,単純に利用する計算資源の量を調整・制限するだけでは,DVFSによる消費電力削減の機会を低減させてしまうという問題が起こることが分かった.今後,ピーク電力の抑制とDVFSによる消費電力削減効果を両立し,かつ様々なハードウェア環境に対応可能な低消費電力化手法について引きつづき検討を行う予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「研究実績の概要」でも述べた通り,本年度は実験・評価環境の整備を進めるとともに,低消費電力タスクスケジューリング手法や実アプリケーションへの自動並列化技術の適用に関する評価・検討などを進めた.
これにより,コンパイラに実装する低消費電力化タスクスケジューリング手法において解決するべき事項をより具体化し,引き続いて実施する予定である手法の評価・改良のための基礎的な指針を得ることができた.具体的には,既存のDVFSを用いた低消費電力化手法では,アプリケーション実行全体にかかる消費電力量を低減可能なものの,実行時の消費電力の増減・変動が大きいという問題があることから,DVFSを適用する機会を確保しつつ,消費電力の変動を抑えるようにあらかじめ考慮してタスク割り当てを行うというアルゴリズムが必要となる.現在,これを目指した手法の改良・開発を進めているところである.また,いくつかの実ハードウェア環境で利用可能な低消費電力化機能を見ると,一般に低消費電力化手法の適用対象モデルとして用いられているものと比較して大きく機能が制限されていることが多い.この様な多様な環境を考慮した一般的な手法として上記の開発を行っている.
さらに,地震動シミュレーションなどの実アプリケーションに対する自動並列化技術適用に関する検討を行い,並列性の抽出技術,データ配置最適化技術の有効性に関する知見も得ることができた.同様の技術は,GPGPUなどのアクセラレータ上でも有効であり,ヘテロジニアスな環境においても有効に働くものと考える.
以上から,今年度において,本研究課題はおおむね順調に進展しているものと判断する.

今後の研究の推進方策

プロセッサの低消費電力化機能やアクセラレータとして動作するハードウェアは近年特に研究開発が盛んであり,GPGPUを同一チップ上に集積した組み込み向けマルチコアプロセッサや消費電力を観測・制御可能なプロセッサチップなどが実際に発表・市販されるようになってきている.つまり,本研究課題において研究開発を進めている技術が求められる場面が増えるということである.この状況に対応するため,様々な環境・プラットフォームについて調査や評価を行い,より汎用的で,新しい技術・プラットフォームにも適用できる手法にしていくことが重要である.そのため,今後は基本となる低消費電力化タスクスケジューリング手法を確立するとともに,様々なプラットフォームの特性や制限を広くカバーするための拡張が必要となる.
以上をふまえ,次年度においては,本年度の検討内容を基に,自動並列化コンパイラへの低消費電力化タスクスケジューリングアルゴリズムの実装とその改善を進めるとともに,シミュレータおよび実機上での情報取得と評価を行う方針である.これにより,提案手法と協調して効果を最大化できるようなアーキテクチャについて考察・評価し,現在実際に利用可能な実機環境にも適用できるように検討を進めることができる.さらに,今年度から引き続き実アプリケーションを対象とした検討を併せて進めることで,より実用性の高い手法になるように改良を進める.

次年度の研究費の使用計画

消耗品等を購入する際の費用の一部に充当する計画である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] GPUにおける細粒度パワーゲーティング向けスレッド発行制御手法の検討2013

    • 著者名/発表者名
      松本 洋平,近藤 正章,和田 康孝,本多 弘樹
    • 雑誌名

      情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)

      巻: 2013-ARC-204 ページ: 1-7

  • [雑誌論文] 地震動シミュレータGMSのOSCARコンパイラによる自動並列化2012

    • 著者名/発表者名
      島岡 護,見神 広紀,林 明宏,和田 康孝,木村 啓二,笠原 博徳
    • 雑誌名

      情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)

      巻: 2012-ARC-202 ページ: 1-8

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公開日: 2014-07-24  

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