研究課題/領域番号 |
24700055
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
和田 康孝 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 助教 (40434310)
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キーワード | ヘテロジニアスコンピューティング / 自動並列化コンパイラ / 低消費電力 / アクセラレータ / タスクスケジューリング |
研究概要 |
計算機システムにおいて高い性能と低い消費電力を両立するために,性能・特性の異なるコアを搭載するヘテロジニアスマルチコアが用いられる.本研究の目的は,ヘテロジニアスマルチコアシステムを対象とする低消費電力化手法を備えた自動並列化技術を開発し.これを適用することにより高性能かつ低消費電力なシステムを実現することである. 本年度は,昨年度に引き続き,DVFSやパワーゲーティング等の適用によって並列アプリケーション実行時の消費エネルギーを削減する,タスクスケジューリング方式に関する検討および実装を進めた.まず初期段階として,チップ上の各コアの特性が均一かつコア数が多い,ホモジニアスメニーコアに適用する手法の検討・評価を行った.さらにその後,チップ上のコアの性能が均一でないヘテロジニアスメニーコア環境に対して手法の拡張・適用を進めた.ヘテロジニアスメニーコアにおいては,高速だが消費電力の大きいコアと,低速だが電力効率の高いコアが混在している.チップ上のコアの特性とアプリケーション内部の特性を考慮しタスク割当先のコアを使い分けることで,性能を維持しつつ大幅に消費電力の削減が可能であることが確認できた. また,タスクスケジューリング手法と平行して,ヘテロジニアスなシステムにおいて広くアクセラレータとして利用されているGPGPUの低消費電力化についても検討を行った.その結果,並列度やメモリアクセス等の実アプリケーションの特性に応じて使用するコア数や動作周波数を調整することで,性能低下を最小限に抑えつつ消費電力の削減が可能であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するためには,システムの実効性能を保ちつつ,より効率的に消費電力・消費エネルギーを削減する必要がある.そのためにはヘテロジニアスマルチコアシステムにおけるソフトウェア・ハードウェア両面から検討を進めることが重要である. 本年度は,前年度における検討内容に基づき,引き続き低消費電力化タスクスケジューリング手法の検討および実装を進めた.特に,チップ上の各プロセッサコアの性能が均一でない場合に対して手法の適用を行い,その有効性が確認できた.また,ソフトウェアによる最適化に加え,ハードウェアの観点からも低消費電力化の検討を行った.ここでは,アクセラレータとして広く用いられているGPGPUに対して,実アプリケーションの特性を考慮した低消費電力化手法が有効であることが確認できた. 以上から,ソフトウェア・ハードウェア両面からの検討・研究開発を進めることができ,本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,本研究課題の目標を達成するにあたって特に重要なタスクスケジューリング手法について検討・研究開発を進めてきているが,最終的に本研究課題の目的を達成するためには,自動並列化の過程で用いられる他の最適化手法と上記タスクスケジューリング手法の連携や,ハードウェアの特性を考慮したタスク割当・プログラム最適化も重要と考えられる.そのため,今後は,自動並列化に関わる他の最適化手法との共存・連携を考慮してソフトウェアの実装を進めるとともに,平行してGPGPU等のアクセラレータ利用技術・低消費電力化技術についても引き続き検討を進める.その後,最終的に様々な指標やプログラムを用いた評価を通じて,本研究の有効性を示す方針である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の想定よりも安価に実験機材が購入できたため. 雑誌論文の掲載料あるいは研究発表のための旅費に使用するほか,実験に用いる機材の仕様を見直し,よりスムーズに研究開発を進められるように研究環境の拡充に用いる計画である.
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