研究課題/領域番号 |
24700059
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
内海 富博 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70292365)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | センサネットワーク / 省電力 / 間欠動作 |
研究概要 |
本研究では,インフラ設備の無い広大な地域に対して長期運用可能な無線センサネットワークをどのように構築するかという課題に取り組んでいる。特に電源の確保が出来ない状況において,センサノードはバッテリーで駆動する必要がある。そのため長期運用するためにはバッテリーの消費を如何に抑えるかが重要である。 平成24年度は,現有設備のネットワークシミュレータQualNet 5.2を用いて,ネットワークトポロジ,ルーティングプロトコルの点から省電力化の検討を行った。センサノード,中継ノード,Sinkノードの3種類のノードで構成される無線センサネットワークを想定し,センサノードはセンシング間隔で間欠動作することが可能であることから,問題は中継ノードの省電力化に絞ることができる。 中継ノードのトポロジとして,Tree型,メッシュ型を用いた。ルーティングプロトコルには,パケット送信の都度ソースノードがルート検索を行うリアクティブ型ルーティングプロトコルのAODV,あらかじめルート検索をしておくプロアクティブ型ルーティングプロトコルのOLSR,プロアクティブ型とリアクティブ型両方の特徴を持つハイブリッド型のZRPを用いて,各トポロジと組み合わせ,消費電力,パケット到達率について検討した。 その結果,AODVの送受信における消費電力がOLSR,ZRPと比べて一番低かったものの,センサノードの数を増やすにつれて,パケット到達率が低下し,センサノードが100ノードで,パケット到達率が10%であった。そのため,既存のルーティング方式では広大な地域で大量のセンサノードを扱う場合には適用が困難であることがわかった。 ノードの間欠動作とフラッディングベースのマルチパスによるルーティングプロトコルについては、QualNet 5.2の標準機能ではないため,カスタマイズにより実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度では,QualNet 5.2に標準で実装されていないノードの間欠動作,フラッディングベースのマルチパスルーティングの実装,およびその評価まで予定していたが,実装する際のデバッグに予想以上に時間がかかった。実装までは完了しているため,平成25年度前半に評価を行う。平行して,実機への組み込みを行い,実機ベースで評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,QualNet 5.2へ実装したノードの間欠動作とフラッディングベースのルーティングプロトコルについて,消費電力とパケット到達率について評価を行う。その結果とデータ集約方法を組み合わせた場合,有効かどうか検討する。さらに,ネットワークトポロジについては,メッシュ型トポロジの配置方法について検証を行う。具体的には一様ランダムな配置の他,ポアソン分布やスケールフリーネットワークのように疎密がある場合についても検証し,複雑ネットワークで用いられているグラフ解析手法により省電力性能との対応付けおよび一般化を目指す。 平行して,実機による評価を行う。無線モジュールはXBeeおよびXBee Proを用いる。この無線モジュールはIEEE 802.15.4規格の短距離無線通信であるが,XBee Pro は出力が10mWと大きく1km程度の通信が可能である。これは,XBeeによる短距離の無線ネットワークの中にショートカットの効果をもたらし,より消費電力の効率の良いトポロジが作れるのではないかと考えたためである。無線モジュールの制御にはPICやARMなどの組み込み向けCPUを使用する。 実機とシミュレーションにより比較評価を行い,低消費電力な無線センサネットワークの実現可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,主に平成24年度の成果発表,資料収集のための学会出席で研究費を使用する。また,実機による評価を行うため,無線モジュール(XBee,XBee Pro),制御用マイコン(PIC,ARMなど)を含む実機製作に必要な電子部品の購入とモジュールを組み込む基板を作成するための装置を購入する。 実機製作と平行して,QualNet 5.2による評価も追加して行うため,購入元の構造計画研究所へQualNetサポートを依頼する予定である。 また、成果をまとめて論文投稿するため,論文別刷も計上する。
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