本研究では,インフラ設備の無い広大な地域に対して長期運用可能な無線センサネットワークをどのように構築するかという課題に取り組んでいる。広大な農地や被災地など,電源の確保が出来ない状況において,センサノードはバッテリーで駆動する必要がある。そのため長期運用するためにはバッテリーの消費をいかに抑制するかが重要である。 平成25年度は,ノードの間欠動作方式およびフラッディングベースのルーティングプロトコルの検証を行った。 中継ノードを間欠動作させた際に,どれくらい稼働しているかの指標としてデューティサイクルがある。これは単位時間(稼働時間+Sleep時間)あたりの稼働している比率を示すものである。そのためデューティサイクルが0.3であっても単位時間が1秒と1分では稼働している時間が異なる。そこで,格子状ネットワークトポロジにおいて,単位時間を1秒,1分,1時間と変えてパケット到達率および消費電力を評価した。その結果,単位時間が1分のものが最も消費電力が少なく,単位時間が1時間のものがパケット到達率が最も高かった。このことから,本研究の対象として考えいる農業向けのセンサネットワークでは気温や湿度などの環境情報を収集するには単位時間が長くても十分対応できるのではないかと考えられる。 最後に,QualNetへ実装したフラッディングベースのルーティングプロトコルの検証を行った。その結果,デューティサイクルを0.9と高くしないとネットワークから切断され,つながらないノードが出ること,そして隠れ端末問題によりパケット衝突が頻繁に起こりデータパケットが収集できない場合が多く見られたため,今後の課題として検討を進める。 また,さらに省電力化を進めるためには間欠動作に適したネットワークトポロジや与えられたネットワークトポロジから間欠動作に適したトポロジへ変換する方式についても検討を進めていきたい。
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