研究課題/領域番号 |
24700060
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大島 浩太 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451986)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 無線センサネットワーク / 環境モニタリング / 通信制御 |
研究概要 |
環境問題の要因・動態解析、防災・減災などを目的とした環境モニタリングへの利用が期待されている屋外設置型無線センサネットワークにおいて、制御不能な自然環境に起因する外乱と共生可能な、自然環境に適応的な通信制御方式を特徴とする環境適応的無線センサネットワークの実現を目指したもので、センサノードに持たせた環境モニタリングのためのセンサデバイスの計測データから周囲の通信環境を推測・学習し、センサノード間の通信制御に活用することによる通信効率及びネットワーク稼働時間の向上技術の開発および実環境における実践的評価を目的としている。 平成24年度は、この目的を達成するにあたり、より長期的な電波の減衰傾向の調査、調査結果の分析、分析結果を踏まえた自然環境変化に対する追従性と応用アプリケーションとして想定している農学分野の研究で利用が可能な環境モニタリングシステムにおける要件を考慮した通信制御方式の検討、より正確なデータを取得するための無線センサノードの機能向上を実施した。分析結果からは、これまでの無線センサネットワーク分野の研究では想定されてこなかった通信効率の変動(通信容量と通信可能距離など)の影響、ノード障害などの異常時における通信効率の変化、長期的な変動傾向などを明らかにした。これらの明らかになった事象、応用アプリケーションにおける要件、実現可能性、アドホックに構成した無線センサノード間のリンクを中継転送する場合のネットワーク的な条件を考慮した通信制御方式の検討を実施した。さらに、これまで運用中のシステム用に、無線センサノード間の時刻同期を可能とする機能を開発し、実装した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、すでに運用中の実環境における通信環境モニタリングの基礎データの収集の継続をはじめ、(1)これまで蓄積した計測データと新規に取得したデータの分析、(2)どのような通信制御が現実的かについて、通信距離の不均一性と中継ホップ数と伝搬データ量を踏まえた通信制御方式の検討、(3)より正確な基礎データ収集を可能とするための計測用ノード間の時刻同期機能の設計と実装を実施した。(1)では、10か月の長期におよぶ計測結果を分析することで、(a)見通しの良い場所で同一距離に設置した場合の電波減衰傾向の類似性、(b)設置距離の長さに応じた通信効率の不安定性、(c)長期間の通信効率の変動には、安定期間と不安定期間が存在、 (d)1時間程度の短期間の通信効率変動の平均値は安定、(e)ノード障害発生時の通信効率の変動傾向、(f)ノード間の距離が長い方が短い場合よりも良い通信効率を示すケースの存在、(g)正常な通信が難しくなる程度まで一時的に電波が減衰する状況などを確認した。これを踏まえ、(2)において、自然環境変化が通信に与えるこのような影響を考慮した通信制御方式の検討を実施した。特に、通信可能な時間帯と通信容量に注目し、計測データを中継転送する際の中継データ量を考慮した新しい通信制御の可能性を見出した。(3)においては、ノードに時刻同期用の仕組みを導入し、計測データの信頼性向上を可能とする機能を開発し、実装した。現在は時刻同期精度の検証を研究室レベルで実施しており、検証結果を踏まえた性能の改善および実環境への適用を次のフェーズとして行う。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 通信環境を考慮した通信制御方式のモデル化 無線センサノード間の通信時に、その時の通信環境とこれまでの計測実験における分析・解析から得られた指標を踏まえて、現在の通信効率や通信可能なノードを推定し、より遠距離のノードに対して効率の良い通信を行うという基本概念による通信制御方式のモデル化を行う。通信制御方式のモデル化のために、(a)通信環境を考慮した無線電波伝搬のモデル化と、(b)無線センサネットワークのトポロジーのモデル化の2種類を行う。本研究では、温湿度に代表される通信環境を考慮するという新しい観点で、見通し距離に設置した機器間の距離に応じた無線電波伝搬モデルであるLog-distance Path Loss Modelの拡張による無線電波伝搬モデルの開発を予定している。 さらに、初年度に前倒しで実施した通信制御方式の検討結果を踏まえ、距離や通信効率が可変な場合を想定した無線センサネットワークトポロジーを開発する。特に、Threshold Network Modelを参考に、部分的なノードのみ接続可能な状況で、それぞれのノードが推定した通信環境に応じてノード間のリンクを可変にする。こうすることで、その時の通信環境に適した効率的な通信制御と、実測値に応じた環境推定閾値の変化による環境の学習を備えた通信制御を実現する。 (2) 無線センサノードのプロトタイプ開発 上記(1)で開発した通信制御方式の実機への実装を行う。実装対象には、近年性能の向上が著しいマイクロコントローラ:Arduinoの利用を検討している。本申請当初は搭載メモリ量などの問題があったが、昨年度からこの問題が解消されつつあるため、安価に利用できるという点からも適していると考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|