環境問題の要因・動態解析などを目的とした環境モニタリングへの利用が期待されている屋外設置型無線センサネットワークにおいて、制御不能な自然環境に起因する外乱と共生可能な、自然環境に適応的な通信制御方式を特徴とする環境適応的無線センサネットワークの実現を目指したもので、センサノードに持たせた環境モニタリングのためのセンサデバイスの計測データから周囲の通信環境を推定・学習し、センサノード間の通信制御に活用することによる通信効率およびネットワーク稼働時間の向上技術の開発および実環境における実践的評価を目的としている。 平成26年度は、この目的を達成するにあたり、前年度の成果として開発した無線センサノードのプロトタイプシステムの台数を増加させた実験と、より台数の多い場合の性能評価を行った。評価は、これまでに開発した、funnel effectの振る舞いを検証するためのシミュレータを活用することによって行った。次に、実践的評価を踏まえた結果から通信制御方式の再検討を行った。検討の結果から、これまでの研究で明らかにした通信効率の季節などの長期的な変動と時間平均の安定性に関する定常的な観測値を用いた統計解析の重要性と、機械学習手法などを用いた通信効率に大きな影響を与える要因の解析の重要性が示唆された。さらに、環境が通信効率に与える影響を環境別に評価するという発展的な研究にも取り組み、海上での無線電波の検出可能エリアの調査、および海面付近や海中という通信において電波減衰が強く発生する場所における電波強度の変動に関する調査を実施した。この結果を踏まえて、通信効率が悪い場合でも利用可能な、通信の無駄の少ない通信制御方式を提案した。
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