被災地における無線ネットワーク環境を素早く構築するシステムを目指し,ネットワークノードの配置場所を決定するアルゴリズムを構築した.無線ネットワークノードを風船に取り付けて建物周囲の空中に配置することで,建物全体をカバーできる無線ネットワークを構築できることを確認した.このような配置を最適化する,遺伝アルゴリズムに基づくアルゴリズムの提案を行った.また,無線電波が屋外から屋内へ伝搬する際の電波強度の減衰を求めるモデルについても,独自の電波減衰予測モデルを提案した.本論文で取り組む問題は三次元配置問題であり提案する手法では,カバレッジの保証(対象空間のうち一定の割合以上の空間をカバーすること) を満たしつつ,必要なネットワークノード数を最小化することを目指す.本論文では,この問題を解決する手法として遺伝的アルゴリズムに基づくアルゴリズムを提案した.提案手法を評価するために,3 つのベンチマーク手法と比較を行った.その結果,提案手法がネットワークノード数が他手法と比べて最も少なくなる配置パターンを生成できることを確認した.研究においては,関連研究のサーベイおよび問題の定式化を行った.また,少数のバルーンを使用した予備実験を行った.予備実験では,バルーンを大学のグラウンドにおいて浮かべ,風の影響を調べた.直径90cm のゴム風船にヘリウムガスを充填し,地上から3点で固定し,風によるバルーンの位置の変化を測定したところ,高度20m程度までは,風の影響はほとんどないことが分かった.また,無線ノードとして市販の無線LANアクセスポイントを使用し,研究棟の窓から吊るし,屋内での電波強度の測定を行った.また,一連の様子のビデオ撮影を行った.研究棟内部で提案手法を使用して実際に計測・評価を行い,比較手法に対する優位性を確認した.研究成果を除法処理学会論文誌に投稿し,採録された.
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