研究課題/領域番号 |
24700069
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
吉廣 卓哉 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (80362862)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ネットワーク / グラフ理論 / アドホックネットワーク |
研究概要 |
平成24年度には、「①広告トポロジの冗長性確保」と「③ループの削減」の2課題に取り組み、それぞれに対して相応の進捗を達成した。 ①に関しては、MANETを対象としたリンク状態型経路制御プロトコルであるOLSRを改良して、迂回路を計算できるような十分に冗長な広告トポロジを確保する技術を開発した。具体的に説明する。OLSRはリンク状態型経路制御プロトコルであるが、ネットワークの完全なトポロジを全ノードに広告するわけではなく、メッセージ負荷を削減するために、最短経路を計算できる限りにおいて、一部のリンクは広告しない戦略をとる。しかし、この広告トポロジは十分に冗長でなく、1リンク、または1ノード故障に対してさえも、迂回路を保証できなかった。本研究では、広告リンク選択手法を改良することで、1リンクまたは1ノードの故障時には、(ネットワークに存在する限りにおいて)必ず迂回路の存在を保証できるような広告トポロジを生成する手法を提案した。このアルゴリズムが迂回路の存在を保証できることは、グラフ理論に基づいて理論的な証明を与えた。さらに、このアルゴリズムにより、迂回路の存在を保証する代償として、どの程度のメッセージ負荷がかかるかを、シミュレーションを用いて評価した。この結果は、国際ワークショップIWIN2012にて発表した。 ③に関しては、ETX等のリンクメトリックが動作するネットワークにおいて、一時的な経路ループの発生を防ぐために、宛先までkホップ毎に中間地点を設定し、パケットを中間地点まで転送することを繰り返す手法を提案した。提案手法をネットワークシミュレータQualnetに実装したうえで、性能評価を行ったところ、経路ループの発生数が少し抑えられることがわかった。この結果は、国内会議DICOMO2012にて発表したうえで、Intech社の英文書籍にも論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には①と③について研究を進めることを計画していたが、それぞれについて対応する手法を提案できた。また、それぞれに対しての評価実験も行うことができた。③については、提案手法の性能が想像よりも低い結果となったが、これについては次年度以降に対応策を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度、及び平成26年度の研究の推進は、当初計画から大きく変更することなく、当初の計画通りに推進する予定である。つまり、平成25年度には②「迂回路の即時利用」と③「ループの削減」に取り組む。 ②については、①の提案手法の上で用いる迂回路構築方法として、主に有線ネットワーク用に開発されてきたIP Fast Reroute法の一種であるSBRを適用して、リンク切断に対してどの程度の性能が発揮できるのかを評価する。 ③については、平成24年度に提案した中間点を設定してループを削減する方法に加えて、それ以前に提案されているループ削減手法LMRを適用し、ネットワークシミュレータによる性能評価を行う。 なお、①②③のそれぞれの技術に対して、引き続き改良方法を検討し、改良方法が発見された場合には性能評価を行うことで、技術の改善に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、当初の計画通り、主に学生への研究協力謝金及び成果発表のための旅費として使用する。本研究提案では、ネットワークシミュレータを用いた十分なシミュレーション実験を必要とし、そのための労力は非常に大きいため、学生からの協力を得て研究を進めることは重要である。また、シミュレーション実験を実施するために計算能力の高いサーバが必要となる可能性が高く、必要に応じて購入を検討する。
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