研究課題/領域番号 |
24700071
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
福田 豊 九州工業大学, 情報科学センター, 助教 (90372763)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ネットワーク / 省エネルギー |
研究概要 |
本年度は[1] 各トランスポートプロトコルのフロー制御アルゴリズムの調査,[2] 実験環境の構築,[3] 初期実験を行った. [1] 事前準備 以下のトランスポートプロトコルについて,それぞれがどのようなフロー制御を行っているかを調査した.(1) TCP NewReno,(2) TCP Vegas,(3) CTCP,(4) CUBIC,(5)TCP Westwood+. [2] 環境構築 実施者が有している,トラヒックに応じてスイッチ間のリンク本数を制御して動的に転送性能を制御できる機材を,本実験で想定している環境に再構成した.さらに (1) ~ (5) の TCP による通信を評価するために,トラヒックを送受信するノートパソコンを1組準備した. [3] 実験 まず最初に動的な転送制御機能を無効にして (1) ~ (5) の TCP を用いて通信を行い,実験結果から準備した環境において各トランスポートプロトコルが組み込まれているフロー制御に従って動作していることを確認した.続いて動的な転送性能制御を有効にし,動的な転送制御を無効にした場合との通信性能の比較や,動的な転送制御手法との親和性について調査した.その結果,TCP によっては動的な転送性能制御が有効であると全転送性能を使い切れない場合があることや,動的な転送性能制御による帯域の増分を検知してスループットを延ばすまでには時間がかかっていることなどが分かった.得られた実験結果については,IEEE GreenCom 2012 および電子情報通信学会 2013年総合大会において研究発表を行った.また,ネットワークの省電力化に取り組んでいる企業の研究者と省電力化のための転送性能制御技術がTCPに与える影響について議論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
評価するための各トランスポートプロトコルのフロー制御の調査,および実験環境の構築は順調に終了している.実験環境については,スイッチを想定した2台の計算機間を最大 8 本のリンクで接続する実験環境を構築し,さらに TCP フローを送受信するための端末 (ノートパソコン) の準備と,各TCPによる通信確認を行った.スイッチを想定している計算機は端末から送信されてくる TCP トラヒックに応じて必要な転送性能を見積り,リンク本数を設定する.この動的な転送性能制御を有効/無効にした場合について,予定していた各TCPの通信性能 (スループット) とリンク本数の結果取得は完了しており,得られた知見をまとめて対外発表も行っている.
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今後の研究の推進方策 |
動的な転送性能 (リンク本数) 制御や各プロトコルのフロー制御の詳細な挙動を確認するために,現在までに取得出来ている情報に加えて,各TCPの輻輳ウィンドウ (cwnd) や ssthresh, 再送パケットなどの情報も取得できるように端末側の環境を整える.現在の所,ソフトウェアの追加によるこれらの情報の取得を検討している.また,各フローの遅延や通信を開始する時間,その継続時間なども変化させ,各要素が通信特性に与える影響を調らべる.さらに,スイッチの転送性能の変化 (リンク本数の変化) にも注目し,所望の通信性能を獲得するまでに要する時間やリンク本数の制御間隔なども調査する.加えて,昨年度に引き続き得られた研究結果の対外発表を検討すると共に,ネットワークにおける省電力について研究開発を行っている企業との研究課題の共有を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究推進方策にも書いたとおり,より異なる通信環境で各トランスポートプロトコルのフロー制御を調査することを検討しており,必要に応じてノートパソコンの追加購入や,実験機材の更新を行う.また,平成24年度に引き続き,国内外のネットワークにおける省電力化手法の研究開発動向の情報収集や,ネットワークにおける省電力化の研究開発を行っている企業との課題共有を目指して研究打合せを行う.これらの活動のための国内外旅費を予算に計上している.
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