研究課題/領域番号 |
24700076
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山本 嶺 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (90581538)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 無線アドホックネットワーク / クロスレイヤ / ルーチング / トランスポートプロトコル |
研究概要 |
今年度の研究では主に,各レイヤごとで実現可能な方式の提案及びレイヤ間協調を用いることで実現可能な方式について提案を行った. 各レイヤで実現可能な方式については,主にルーチングプロトコルと関連技術についての提案を行った.提案手法としては,従来より提案されていたOpportunistic Routing(OR)を改良し,新たなメトリックを経路選択のために用いることによって,信頼性を確保しながら通信効率を向上させることが可能なルーチングプロトコルの提案を行った.また,データリンク層での再送制御方式を改良することによって,無線アドホックネットワーク上での不安定な通信を克服する手法を提案した.これは,電波干渉などの一時的なリンク切断に対応するための手法であり,不必要な経路再構築を減少させることによって,通信効率の低下を回避することが可能となった. レイヤ間協調を用いた手法として,送信速度制御による負荷分散手法を提案した.従来,負荷分散では空間的に負荷分散を実現していたが,ネットワークトポロジーなどが随時変化する無線アドホックネットワークでは,必ずしも適切な方法とは限らない.そこで,送信速度制御を用いて時間的に負荷分散をすることによって,ネットワークトポロジーに依存することなく,適切に負荷分散を実現可能な手法を提案した.この手法では,データリンク層から得られた情報をネットワーク層の機能を利用して情報伝達し,最終的にトランスポート層で制御をする方式を利用している.つまり,三つのレイヤの機能を利用して制御を行っている.これは,本研究の目的である統合的通信方式に必要不可欠な技術要素であり,レイヤ間協調の実現可能性を示す上でも有意義な成果となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画を達成するために必要な要素として,各レイヤごとの機能実現,レイヤ間協調の検討,統合的通信方式の検討がある.今年度は主に各レイヤごとの機能実現とレイヤ間協調について検討を行った.各レイヤごとの機能実現では,統合的通信方式に必要不可欠な要素となると考えられるルーチング方式,その中でも自由度の高いOpportunistic Routingについて調査,検討を行い,新たな手法を提案した.この技術は,統合的通信方式の検討を行う上でネットワーク制御の自由度を高める意味で非常に重要な技術である.更に,レイヤ間協調の検討として,送信速度制御による負荷分散手法を提案した.この手法では,データリンク層,ネットワーク層,トランスポート層の機能を互いに連携させ,一つの制御を実現することで,単一レイヤでは実現不可能であった制御を可能にしている.レイヤ間の連携は,統合的通信方式を実現するために必要なクロスレイヤ技術でもあるため,連携方法の検討及び実現のための調整などを行うことができた. 以上より,研究目的を実現するための基礎的な部分の検討は今年度で終了し,当初の目的通り,H25年度には,統合的通信方式の具体的検討に移行する.方式の基礎的な検討については,H24年度より実施しており,他の研究者の意見なども参考にしながら従来手法の調査や試行的提案などを行ってきている.そのため,H25年度より,具体的な設計を行うとと共に,併せて評価実験を行い,改良等を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の研究計画は,H24年度と同様に研究課題を達成するための要素についてそれぞれ検討を進めていく.H25年度は,最終年度となるため,個々の要素の検討の他に研究全体のまとめとして,今までに得られた成果を統合的に利用する.H25年度の研究計画は,無線アドホックネットワークで複数レイヤを統合し,シームレスに連携することによってより効率的な通信を実現することであるため,H24年度に行った検討を精査し,互いに連携を行う方法についての検討や手法の改良を行う.検討によって得られた成果は,コンピュータシミュレーションや数値解析等を通じて評価を行い,その結果をフィードバックすることによって更なる改良を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費の使用計画としては,主に成果発表及び研究調査のための旅費,計算能力の向上やデータ保存のためのPC能力向上に用いる.成果発表については,電子情報通信学会のソサイエティ大会,総合大会,研究会で発表を行うことを予定している.また,その他に国際会議や論文誌等でも発表を予定している.
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