研究課題/領域番号 |
24700089
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 和晃 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10584047)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 調味料使用量計測システム / 調理支援 / 健康管理 |
研究概要 |
平成24年度は,交付申請書に記載した課題のうち,主に「(A)調味料瓶把持動作の検出・調味料重量変化の測定」に取り組んだ. 検討段階では,調理者が調味料を一つずつ把持するものと想定し,次のような装置の設計を考えていた.まず,各調味料瓶の上にその調味料の種類を示すマーカを貼付する.このマーカを天井に設置したカメラにより観測・検出することを試み,その検出の成否を以て調味料瓶把持動作を検出する.このとき同時に,調味料瓶把持動作に伴う重量変化を秤で計測し,これを当該調味料の重量変化の測定値とする.しかし,実際の調理の様子を観察した結果,複数の調味料瓶が同時に把持されるケースも多々あることが分かった.このような場合,上記の設計では調味料重量変化を正しく計測することができない.この問題を解決するため,「調味料の重量はそれが把持されていない間は変化しない」「個々の調味料の重量変化の総和が秤の値の変化として計測される」という2つの仮定を導入し,これらを制約条件として組み込むことで複数の調味料瓶が同時に把持された場合でも各々の重量変化が個別に測定できるよう改良し,実際にこの方法に基づく調味料使用量測定システムを開発した.以上のことから,本課題(A)については,当初の想定を上回る成果が得られたと言える. 本課題(A)の実現により,一般家庭において調味料使用量データを容易に記録することが可能になったと言える.これだけでも,記録されたデータを栄養管理・健康管理に役立てることは十分可能であることから,多くの国民が健康に気を使うようになった昨今,その社会的意義は大きいと考える.これは交付申請書に記した通りである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では主な研究課題として以下の3つを挙げた. (A) 調味料瓶把持動作の検出・調味料重量変化の測定 (B) 調理者のディスプレイ注視動作の獲得 (C) ディスプレイ注視動作および調味料瓶把持動作の履歴に基づく調理者の要求内容の推定 このうち平成24年度には(A)(B)の2つを実施する予定であったが,実際には(A)を実現するにとどまった.この点において研究の進捗はやや遅れていると判断せざるを得ない.進捗がやや遅れた理由としては,研究代表者の所属が平成24年6月を以て京都大学から大阪大学に移り,当初借用を予定していた京都大学・美濃導彦教授を中心とするグループの研究設備の利用が元々の想定よりも容易でなくなった点,同じく研究代表者の異動に伴って他の研究・業務に割り振るべきエフォートに若干の変更が生じ,本課題に当初想定していただけのエフォートが割り振れなくなった点,課題(A)の実施にあたり当初の想定より高度な機能が求められ,それを実現するために予定以上の時間を費やした点などが挙げられる.しかし,課題(B)は(A)~(C)の中でその実現が最も容易なものであり,実施は困難ではないことから,研究進捗の遅れはさほど大きくはないと判断される.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,平成25年度には課題(C)に着手する予定となっている.課題(C)の実施にあたっては,その基盤として調味料使用量データの収集が必要になる.ここで,調味料使用量データは一回の調理ごとに一つのみ獲得できるものであり,一般に一日の間に行われる調理の回数には上限が認められることから,このデータ収集作業を先送りすればするほど獲得できるデータの数が減ることになる.従って,平成24年度に実施予定であった課題(B)を先に行うことで課題(C)の着手時期を遅らせることは望ましくない.この点を踏まえ,今後は,調味料使用量データの収集を最優先とし,これと並列させる形で課題(B)に着手する.データ収集自体は課題(A)の実現に伴って開発したシステムを使用することで研究代表者の監督なしに実行可能であることから,上記の並列は十分に可能であると考える.その後,データ収集と課題(B)が実現できた時点で,当初の予定通り課題(C)に着手する. なお,当初は調味料使用量計測システムを1台のみ設計する予定であったが,データ収集においてはシステムが複数台あった方が望ましいことから,今後は物品費および旅費の使用を多少切り詰め,それによる差額を,複数台の計測システムを設計するための費用として運用することを考える.
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度の項目において述べた通り,平成24年度に実施予定であった課題(B)の着手に至らなかったことから,これに必要となる情報提示用ディスプレイおよびディスプレイ注視動作観測用カメラの購入を見送った.また,調味料瓶把持動作観測用カメラとして,当初は画像処理に適したIEEE1394カメラの使用を予定していたが,これをより安価なWebカメラを使用する方針へと変更した.このことから50万円程度を平成25年度に繰り越すこととなった. この繰り越し分の一部は,当初の計画通り,課題(B)の実施に必要となる物品の購入費に充てる予定である.また,「課題(C):ディスプレイ注視動作および調味料瓶把持動作の履歴に基づく調理者の要求内容の推定」の実施にあたっては,調味料使用量データを多量に蓄積することが求められることが分かったが,当初の計画どおり記録システムを1台用意するのみでは,十分な量のデータを収集することは困難と考えられることから,平成24年度からの繰り越し分は記録システムを複数台設計するための物品購入費に充てる.課題(C)の実施にあたっては,基本的に当初の計画通りに予算を執行する予定であるが,必要に応じてサーバ等をより安価なものに変更し,その差額で記録システムの台数をさらに増やすことも考える.
|