前年度までで,ユーザプロファイルの提示による,ユーザの自身の興味や嗜好に対する気づき支援の研究は概ね終了した.そのため,今年度は推薦リストの提示に焦点を当てることにした.具体的には,推薦リストに予測評価値が高いアイテムと低いアイテムを混合させることで,ユーザにとって意外性の高いアイテムの存在に気付くかどうかを調べた.予測評価値が高いアイテムばかりから構成されるリストは,ユーザにとってすでによく知っているアイテムばかりが推薦される可能性が高い.また,知らないアイテムが含まれていたとしても,それを見過ごしてしまうかもしれない.一方,予測評価値が低いアイテムばかりから構成されるリストは,ユーザにとって意外と思われるが,リストの質については懐疑的になるかもしれない.本研究では,それらを適切に組み合わせることで,ユーザは意外なアイテムの存在に気付く可能性があると考え,その基礎実験をすることとした. データセットには,地上波テレビ番組2日分を収集したものを用いた.これを分割し,予測評価値の高いアイテムのみのリスト,低いアイテムのみのリスト,高いアイテムと低いアイテムを混合したリストの3種類を比較し,ユーザが知らないアイテムを探す行動を取ったかどうかを調べた.なお,リストは上記のリストを単体で見せる場合と,それらを並べて見せる場合の2種類を試した.被験者は16名である.その結果,混合したリストにおいて,ユーザは積極的に知らないアイテムを探す行動をすることが分かった.また,それにより意外なアイテムを発見する個数が増加することが分かった.
|