研究課題
若手研究(B)
現実世界の周囲の環境を光源として使用する環境照明を用いたレンダリングは,高精細な画像を生成することができるが,あらゆる方向から入射する光を考慮するため計算コストが高く,リアルタイムにレンダリングすることが難しい.そのため,従来手法ではリアルタイムレンダリングを実現するために,静的なシーンや扱える反射特性などに制限があった.本研究では,任意の反射特性に対応した環境照明下における動的シーンの高速レンダリング法を提案する.平成24年度では,Blinn-Phong BRDFやCook Torrance BRDFによって表現される光沢反射を考慮した環境照明下における動的シーンの高速レンダリング法の研究を行った.特に,光沢度が非常に高い材質を考慮したレンダリング手法の開発を行った.環境照明下の物体表面の輝度は,環境照明・可視関数・BRDFの積を方向について積分することによって求められる.提案法では,環境照明およびBRDFを球面ガウス関数の線形和で表現する.球面ガウス関数と可視関数の積の積分は,球面ガウス関数のsummed area table(SAT)化により高速に計算できる手法を開発した.さらにSATを方向に関する関数近似を行うことにより,必要となるメモリ量が非常に少なくてすむ手法を開発した.これらの研究成果をまとめ,CG分野において権威のある国際会議Eurographics 2012に投稿し採択された.
2: おおむね順調に進展している
従来法ではあらゆる方向に一定に反射する拡散反射か,非常に鈍い光沢反射しかあつかうことができないという欠点があったが,提案法により,非常に鋭い光沢反射を考慮した環境照明下における動的シーンのインタラクティブレンダリングが可能になった.本研究の新規性・有効性は難関国際会議であるEurographics 2012に採択されたことからも伺える.そのため,本研究はおおむね順調に申請していると思われる.
平成25年度は,布のような薄い素材についてのレンダリング手法の開発を試みる.これにより,提案法の扱える形状についての制限がなくなり,より汎用的なレンダリング手法になると思われる.基本的に平成24年度に開発した手法を拡張し,薄い素材による影を考慮する.物体表面を構成する三角形について,球面ガウス関数の軸を鉛直方向とする半球上でラスタライズする.このラスタライズを階層構造を用いて高速に計算する手法の開発を行う.
当初の予定に沿って研究費を使用させて頂く.
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Computer Graphics Forum (Proc. of Eurographics 2012)
巻: 31 ページ: 727--734
10.1111/j.1467-8659.2012.03052.x
情報処理学会論文誌
巻: 53 ページ: 1905 - 1914
10.1145/2366145.2366163
巻: 31 ページ: 144:1-144:7