本研究年度における研究実施内容は主に前年度の成果の応用性について考察するものであり具体的内容は以下の通りである。 まず、前研究年度までの基礎技術研究の成果をまとめたものが本研究年度開催の国際会議(査読付き)において採択され、発表を行うとともに同会議概要集にフルペーパー論文が掲載された。また、本研究の分野において最先端の技術発表・展示が行われる国際会議であるSIGGRAPH2013 (米国)に参加し、造形アルゴリズムの調査を行った。 次に、前年度に開発したトレーサリー文様生成アルゴリズムの効率化について検討を行った。具体的には二次元のトレーサー画像から効率的な三次元メッシュ形状を構築するアルゴリズム開発が主体となった。これについては画像処理的手法や解析的手法など、複数のアプローチを試みたが、いずれも誤差の軽減に問題が生じており、本研究年度中に実用レベルには達しなかった。結果として、やや非効率的ではあるものの、高解像度画像からディスプレースメントマッピングで立体化する方法を前年度より継続使用して立体形状を得ている。 続いて、それらの立体形状の最適な出力方法について検討を行うため、異なる複数の方式の3Dプリンタおよび3Dプロッタでトレーサリー形状の出力を試み、様々な観点から検証を行った。結果として、レリーフ状のオブジェクトにおいてはFTI方式の3Dプリンタが強度・解像度・出力時間・審美性の面で優位性があることが判明した。 最終的に、得られたパーツを実際の装飾部材へと応用する試みとして、審美的な室内装飾パネルの制作を試みた。実際に3Dプリントされた樹脂パーツに対して複数回の塗装を施し、それらをフレームに納め、シャドウボックス形式のレリーフ装飾パネルとして仕上げた。これらの成果物はアウトリーチ活動として国内の公募展に出品し入賞の評価を得ている。
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