研究課題/領域番号 |
24700115
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲葉 利江子 京都大学, 情報学研究科, 講師 (90370098)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | グループウェア / 多言語コミュニケーション / 機械翻訳 |
研究概要 |
平成24年度は、目的の一つである「コミュニティの多言語コミュニケーションのパターン化」に焦点をあて、以下の2点についての研究を進めた。 (1) パターンランゲージによるコミュニケーションのモデル化 教育分野での多言語教材の共有化に焦点を当て、パターンランゲージによるモデル化の提案を行った。具体的には、Web教材作成における学習オブジェクトのパターン分析と言語グリッドとの連携モデルについて検討を行った。 (2) 国際的活動および多文化共生活動組織のコミュニケーション形態の類型化 多文化共生センターきょうとの協力のもと、日本語の理解が困難な入院患者と看護師とのコミュニケーションを支援する「ぷち通」(多文化共生センターきょうと、和歌山大学との共同開発)の京都大学付属病院への導入過程を観察するとともに、現場導入および利用における問題点などの抽出を行った。Webサービスを中心としたシステムでの支援の場合、ネットワーク環境の確保および、対象のユーザを絞ったインタフェースの検討が必要であること、現場支援者の導入支援の重要さなど具体的な課題抽出を行うことができた。さらに、NPOパンゲアらが推進しているYMC-Vietプロジェクト(農業支援プロジェクト)における翻訳支援フローの分析を行った。具体的には、共通言語のない環境でモノリンガルのみの支援により情報伝達がどのように成立するのかについて分析を行った。特に、モノリンガルの機械翻訳の利用前後におけるモノリンガル支援者の編集作業に注目した。その結果、モノリンガルの翻訳前編集の方法をカテゴリ分類し、情報伝達への影響との要因を調べ、情報伝達を円滑に行うためには、一定のルールを設ける必要があることを明らかとした。以上のように、言語サービスを用いたコミュニケーションツールでの支援形態の分析・課題抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの国際的活動および多文化共生活動組織の活動の分析に注力したため、「コミュニティ辞書形成のためのインセンティブ分析」に関する研究が遅れている。しかし、京都大学生協のサイトにて申請者が中心に構築した「京大翻訳!」システムにおいて、一般ユーザが利用できる「ユーザ拡張辞書機能」によるデータ蓄積は行われている。これらのデータをもとに、H25年度に分析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究申請書に基づき、以下の2点について研究を推進する。 (1) コミュニティ辞書形成のためのインセンティブ分析:インセンティブのない一般ユーザの辞書作成過程について、H24年度に蓄積した「京大翻訳!」のデータを基に分析を行う。また、ご当地翻訳(東北地方の翻訳サービス)の実現を目指し、ボランティアによるコミュニティ辞書の作成を計画し、具体的な作成過程における問題点および意識調査を行う。さらに、コミュニティ辞書の多言語化に伴う課題を明らかにするとともに、スケーラビリティを考慮した作成フローの構築を行う。 (2) 多言語コミュニケーションのパターン化:H24年度に調査を行った3つの国際的な活動および多文化共生活動を基に、多言語サービスの利活用におけるコミュニケーション形態および支援形態の類型化をパターンランゲージを用いて行う。 以上の2点から現場のニーズにあった多言語コミュニケーション支援環境のモデル化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) コミュニティ辞書形成のためのインセンティブ分析:コミュニティ辞書形成過程の分析のため、被験者実験における謝金、および多言語化の翻訳に研究費を利用する。 また、コミュニティ辞書形成のための支援ツールの実装および公開のためのサーバ運営費に支出する。 (2) 多言語コミュニケーションのパターン化:国際的な活動および多文化共生活動の分析のための観察等における旅費および現場データ提供に関わる謝金が必要となる。 さらに、(1)(2)に関わる研究発表および関係組織との意見交換および研究打ち合わせのための旅費が必要となる。
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