研究課題/領域番号 |
24700119
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山本 豪志朗 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (70571446)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ |
研究概要 |
本研究ではユビキタスプロジェクションシステムを組み込んだ知的照明環境下において,ユーザの日常的な活動を支援する情報提示空間の実現を目指している.これらを実施するため,三つの技術課題を設けている:(1) ユーザを含む空間内の実環境センシング,(2) ユーザ状態に応じた視覚情報配置,(3) 配置面に応じた複合現実感重畳投影.当初の計画では,本年度の実施項目として,項目(1)の複数台の距離画像センサを用いたユーザの三次元形状データ取得技術,項目(2)のヒューマンモデルを用いたユーザの位置姿勢計測技術,項目(3)では投影技術の向上をそれぞれ目指していた. 項目(1)では,複数台の距離画像センサを設置し,リアルタイム三次元実測空間を構築する予定であったが,研究環境等の問題から本年度は単体センサを用いた計測に計画を切り替えた.また検出したデータからユーザ抽出し,位置姿勢を求める予定であったが,単体センサでは計測が不十分なことがあり,本年度は情報から頭部位置のみを抽出し,頭部位置を利用したシステム開発とした.また,三次元データからは投影対象面を見つける平面検出を実装した. 項目(2)では,ヒューマンモデルを用いてユーザと投影対象面の位置関係から,適切な投影表示場所の検出を予定していたが,項目(1)で取得データ不十分な状況となったため,まずは基礎的なセンサ・プロジェクタ間の校正に焦点を当て,距離画像センサ,プロジェクタ,カラーカメラの三者の幾何学的整合性を確保する技術開発を行った.そして投影面の位置姿勢に合わせた情報投影を実現した. 項目(3)では,複数台プロジェクタを利用する技術向上に努めた.本年度は室内埋め込み型システムの開発ではなく,モバイル環境における複数台プロジェクタ間の色補正技術の開発を行った.これらの技術を埋め込み型にも適用する予定である. 上記研究成果をもって学会発表も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主たる遅れの原因は海外長期出張による研究環境の変化にある.当該年度は他プロジェクトの一環にて海外長期出張であったため,当初の研究計画に沿った研究の実施は少々困難な箇所があった.その計画を進めるにあたっては,複数の画像センサや複数の大型プロジェクタといった特別な機材を用意する必要があったが,出張先にて所望の実験環境を整えることは予想以上に難しかった.そのため,主要な機材等の購入は次年度に行うこととし,簡素な環境でも行えるような要素的な課題に的を絞って取り組んだ.次年度初旬には,機材を揃えて各要素課題を実機で確認する予定である.このような研究実施計画の変更が生じ,結果的に当初の研究計画よりも遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
実施計画は三つの研究項目に分けて行い,最終的には研究項目(3)を重点的に進めることで,それぞれの成果を繋ぎ合わせて一つのプロトタイプとして体系化する.そして,実証実験を通して開発技術やシステム全体を評価する.各段階において,研究会等にて発表を行うことも予定している 項目(1):複数台の距離画像センサを使って,計測空間に存在する物体やユーザの三次元データを一元管理する.それら物体個々に応じて,人物判定等の処理を施し,それぞれ各種データを項目(2)の処理系で必要となるデータセットとしてまとめる. 項目(2):人物三次元データと事前に学習したヒューマンモデルを用いて,対象の姿勢・位置・状態等を推定する.それから求められるユーザ位置姿勢からユーザの視点位置を割り出し,周囲の環境と照らし合わすことで,ある表示規則に従って情報コンテンツを光投影表示する制御技術を開発する.同時に,各人物への情報提示に適切な情報提示面となり得る平面候補を求める処理技術を開発する.想定環境において実施が困難と判断した場合は,距離画像センサだけではなく,埋め込み型RFIDタグネットワークシステム等を利用することで,人物の位置検出やその他物体の位置検出を比較的容易にする手段を準備している.これらは実証実験を行いながら改良を重ねていく予定である. 項目(3):項目(1)及び(2)を用いて,単に情報を投影するだけでなく,投影先に依存したコンテンツによってアノテーションや見えなど,複合現実感技術を用いて情報提示する手法を取り入れる.また,具体的な利用シーンを想定し,コミュニケーション,受動的情報享受,知識補完機能といったアプリケーションの開発を行う.ここの技術に関して実データを伴う実証実験を行い,最終的にアプリケーションを含めたシステム評価実験を実施する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
「研究の目的」の理由の枠に記した通り,研究環境の大きな変化により研究計画を多少変更し,本年度に計画していた実機を用いた作業を次年度に回す策を取り,機器の購入を控えたために次年度使用の研究費が生じた.しかしながら,購入機器を利用する作業の実施時期を変更しただけであり,当初計画していた内容は引き続き実施する予定である. 翌年度初旬には当該研究費で主要な機器を揃え,本年度の成果を適用させたプロトタイプシステムを構築する.そして,「今後の研究の推進方策」で記載した計画を次年度請求分の研究費を使用して実施する予定である.
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