本研究課題では,ユビキタスプロジェクションシステムで実現する知的照明環境下において,実環境センシングに基づく視覚情報配置行ううえで次の三つの項目に取り組んだ:(1)ユーザを含む空間内の実環境センシング,(2)ユーザ状態に応じた視覚情報配置,(3)配置面に応じた複合現実感重畳投影.最終年度では各項目に対して以下のような成果が得られた.項目(1):プロジェクションシステムで広範囲にわたりディスプレイが存在する環境で表示されるコンテンツを効率よく操作できるインタフェースを実現するためのセンシング手法を開発した.実環境センシングによってユーザの意図する動作を的確に認識し,ユーザを取り囲むような大型ディスプレイなどで有効に動作することを確認した.項目(2):ユーザの作業状態・内容及び記憶に関連付けた情報提示手法を考案し,作業支援への応用を試みた.具体的には,RFIDシステムとDB構築によって,棚などの内部にあって通常では視認できないものをその扉表面へと投影する仕組みを構築し,知的照明環境下で高齢者を支援する試みを行っている.項目(3):知的照明としての機能向上として,対象面の反射率及び環境光の変化を推定することで頑強な見かけ制御を実現する手法を考案した.本手法のシミュレーションを行い,実現可能性を見出した. 研究期間全体を通して,プロジェクタという映像表示機器を知的照明という新たな日常生活用機器として利用するという新たな観点において問題となる各種課題として上記三つの項目に取り組んだ.照明器具として新たな可能性を探るという観点で特色のある研究と考えている.
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