研究課題/領域番号 |
24700121
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
三浦 直樹 東北工業大学, 工学部, 講師 (70400463)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒューマンエラー / 脳機能計測 / 認知プロセス |
研究概要 |
平成24年度は、過去の実験データや先行研究に基づき、認知的ゆらぎの原因となると想定されるヒトの心的状態や外部環境による要因の抽出を行った。そして抽出された心的・外的要因に基づき、個々の要因を操作可能な心理物理実験課題を設計し、脳機能計測実験を実施した。 認知的ゆらぎの要因・分析抽出作業においては、過去に行った実験データや先行研究のデータを精査し、ヒューマンエラーの元となる認知的ゆらぎが(1)作業課題時に被験者に対して設定される実験条件及び教示される課題ルール、(2)課題ルールでは判断困難な探索的な行動(知識ベース行動)の有無、(3)課題に対する効力感、(4)課題に対する熟練、(5)過去の試行を成功したか失敗したかについての被験者の行動履歴、等の要因によってより顕著に生じうる可能性が示唆された。 この分析結果に基づき、各々の要因を実験的に操作可能な心理実験課題を設計し、行動実験または脳機能計測実験を実施した。その結果、特に(1)の課題ルールの要因に関する脳機能計測実験において、認知的ゆらぎの検出可能性をよく示すデータが観察された。またそれと合わせて(5)行動履歴に関する要因については、関連する先行研究において用いられたヒューマンエラーを誘発し易い心理実験課題(フランカー課題)と親和性が高く、課題に改良を加える事でエラー試行の回数を確保した上で主観的行動履歴を追跡出来る事を確認出来た事から次年度に行う脳機能計測実験課題として採用する事とした。 それと併せて、脳機能計測データをリアルタイムで分析するための信号処理手法について基礎的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において設定した昨年度計画である、ヒューマンエラーの原因となる認知的ゆらぎが生じる心的・外的要因の抽出、認知的ゆらぎとヒューマンエラーに着目した脳機能計測実験課題の作成、脳機能計測実験の遂行を行えた事からおおむね順調に遂行出来ていると評価する事が可能である。脳機能計測実験に関しては、認知的ゆらぎを観察するためのデータとしては十分であったが、学術発表を考えると被験者数が少なかったため、今年度以降は被験者数を増加させて、論文投稿・学会発表の形で成果公表を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度前半は、平成24年度に行ったヒューマンエラーの要因を要素化した課題遂行時の脳機能計測実験結果を元に、fMRIによる認知的ゆらぎを特定する脳機能計測実験の実施を行う。計測された fMRIデータは、操作ミスに関与する機能領域の特定と、時間変動成分からみた認知的ゆらぎの特徴抽出の2種類 の方法で分析を行う。先行研究より認知のゆらぎを推定出来る可能性のある前頭極部、24年度のNIRS実験でも検証された背外側前頭前野と頭頂連合野との領域の相互作用について特に着目し評価を行う。平成25年度後半は、fMRI脳機能計測実験で得られた研究成果を受けて、操作ミスに関与する認知的なゆらぎをNIRS測定装置により計測可能である事の実証実験を行う。そしてfMRI実験で得られている知見と同様の結果が得られるかどうかについて検証を行う。 さらに平成24年度に行った脳機能計測実験に関して、学術発表を目指し被験者数の増加のため追加実験を行う。 平成26年度前半は、前年度の研究内容を継続してfMRI実験で得られた脳科学的知見とNIRS実験で得られた計測 結果との間の関係性についての分析を行う。その後に、NIRS計測信号における認知的ゆらぎの知見を元に、ヒューマンエラーの原因となりうる認知的ゆらぎ 信号を脳活動信号から検出する信号解析手法の開発、および操作ミスを誘発しやすい脳活動状態を明らかにする事を行う。そして、これらの信号解析手法を利用した、操作ミスを誘発しやすい脳活動状態では情報システム利用者に警報音等で注意を促す操作ミス警報システムのプロトタイプモデルの構築を目指す。信号処理およびゆらぎ信号検出には、個人内変動・個人間変動の双方に対応可能な検出手法が必要になる事から、多くの被験者からデータを収集する事により、少ないチャンネル数の計測データからでも検出可能な信号検出手法の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じた理由として、参加する予定であった学会大会と、別の業務との日程が重なってしまったため参加する事が出来ず、旅費の使用が出来なかったためである。そこでこの研究費については、今年度以降に成果公表するための学会参加、または論文投稿のための投稿料用の予算として使用する予定である。
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