研究課題
遠赤外線画像を用いた非接触型の自動呼吸計測法を実現すべく,本年度は以下の検討を行った.(1) 申請者らがこれまでに考案した遠赤外線画像上の鼻部領域検出手法(以下,従来法)について,約25000枚の画像を用いて鼻部領域検出のシミュレーション実験を行い,計測環境,及び頭部姿勢が性能に与える影響について考察した.その結果,撮影条件によって背景や顔以外の領域で誤検出が多く発生するケースがあること,頭部のヨー方向の回転に対し,十分な精度が得られないことを確認した.(2) (1)で確認された撮影条件に関する課題を解決すべく,従来法の改良を試みた.具体的にはまず,ヒトの体表温度は外気よりも高温であるという仮説に基いて,遠赤外線画像より顔面の候補領域を検出する手法の検討を行った.次に,前述の手法を用いて,従来法において生じる誤検出を識別する機能を取り入れた新手法を考案した.評価実験の結果,従来法よりも約30%,誤検出の発生率を10~30%程度低減できることを確認した.(3) 提案手法の具体的な応用として,マッサージ施術への適用可能性について検討した.具体的には,マッサージの効果の簡易な計測・評価手法の実現における,本提案手法の有用性について考察した.予備実験により,顔面温度分布,身体的疲労,並びに体感的疲労について,マッサージ前後の比較を行った結果,顔面の温度と体感的疲労に関連性がみられた.また,顔面温度分布の取得における提案手法の適用可能性,及び技術課題が明らかとなった.
3: やや遅れている
鼻部領域検出法について検討を進めてきたが,現時点で頭部姿勢の変化に対して十分な精度を達成できてないため.
今後は,頭部姿勢の変化に対して頑健な鼻部領域検出法について更なる検討を行う.これに加えて,呼吸流量のモデル化を行うため,呼吸動作における呼吸流量と呼吸部位の温度変化,鼻,口の形状に関する詳細なデータを収集し,各パラメタ間の関連性を分析する.次に,呼吸動作中の鼻腔部,及び口部周辺における気温変化のモデル化を行うため,前述のデータに加えて,呼吸動作における気温の変化に関するデータを収集する.得られたデータから,各パラメタ間の関連性を分析する.以上の分析結果を基に,呼気・吸気の強弱,並びに一呼吸の時間間隔の推定モデル構築を試みる.また,これら一連の処理を実行する評価システムを試作し,提案手法の有効性と適用範囲,実用化に向けた課題の明確化を行う.
呼吸流量の計測において,当初購入を予定していた測定器と計算機による計測方法は,予備検討,及び先行研究調査の結果,十分な精度が得られないことが判明した.そのため,計測の実施に必要な備品,消耗品,謝金などを再検討する必要があった.これにより生じた研究費は,高精度な計測が可能な測定器(AD Instruments社製),及び制御用計算機の購入に充てる予定である.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
International Journal of Advances in Telecommunications, Electrotechnics, Signals and Systems
巻: vol.2, no.1 ページ: 34-39
10.11601/ijates.v2i1.25
Proc. of 35th International Conference on Telecommunications and Signal Processing
ページ: 586-590
10.1109/TSP.2012.6256364