遠赤外線画像を用いた非接触計測の自動呼吸計測を実現すべく,本年度は以下の検討を行った. (1) 申請者らがこれまでに考案した鼻呼吸の自動計測法について,計測時の頭部姿勢が呼吸の計測精度に与える影響を実験的に考察した.具体的にはまず,頭部の前後屈,左右側屈,左右回旋,並びにこれらの組み合わせにより,遠赤外線カメラと頭部の相対的な位置を変えた画像160000枚の撮影を行い,呼吸中の鼻部周辺の温度変化の分析を行った.次に,分析結果に基いて,呼吸計測のシミュレーション実験を行った.その結果,鼻腔内壁が隠れる前屈姿勢を除いて,概ね良好な精度で呼吸の自動計測が可能であることを確認した. (2) 次に,呼吸の仕方が計測精度に与える影響を実験的に考察した.具体的には,上記(1)の各実験条件について,通常呼吸に加えて,努力性吸入・通常呼出による呼吸,通常吸入・努力性呼出による呼吸を行った際の画像約500000枚を撮影し,呼吸計測のシミュレーション実験を行った.その結果,呼吸の仕方によらずに,概ね良好な精度で計測可能であることを確認した. (3) 申請者らの手法の口呼吸へ応用可能性を探るための検討を行った.具体的には,口のみを用いて呼吸を行った際の顔面熱画像の撮影を行い,口部付近の温度変化の分析を行った.次にこれらの結果から,申請者らのアプローチの適用可能性,及び口呼吸の非接触計測に向けた技術課題について考察した.その結果,口内部の温度変化を安定してとらえるために,計測時に一定以上の開口が必要であることが確認された.
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