開発した手持ち型マルチモーダルディスプレイを用いて、視覚・触覚・力覚の3感覚に対する効率的な情報提示条件の検討を行った。特に、視覚と力覚の相互作用についての検討について詳しく解析した。ディスプレイに映し出した映像の運動方向と力覚刺激を提示するための錘の運動方向は、これまで同方向であったが、反対方向への動作においても相互作用があることが分かった。 バーチャルリアリティの分野において、「実際にそこに存在しない物を、あたかもそこに存在するように錯覚・認知させる」ことが課題のひとつである。この課題を解決する手法に仮想現実と拡張現実(Augmented Reality:AR)とがある。仮想現実は現実環境の再現であり、ARは現実には再現できない。ARは、現実環境の一部に追加情報を提示し、拡張現実を構築する技術である。現在、主に用いられているARシステムは、映像や画像の一部に情報を追加し、視覚へ提示することで、現実以上の情報を提示するものが多い。しかしこれらARシステムの多くは、視覚に対してのみの追加情報を行っている。 開発したディスプレイを用いて、視覚と力覚に対し、同方向への刺激は現実に再現できる仮想現実であるが、反対方向への刺激提示はARとなる。 今回の研究により、開発したディスプレイのシステムを用いれば、視覚のみならず力覚に対し仮想現実とARの両方を提示できることを示した。
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