研究課題
本研究では,スピーカ配置に自由度があり,かつ簡易に立体音響を体感できる小規模な立体音響再現システムの実現を目指した.そこで,音響情報の提示にパラメトリックスピーカを利用することを検討した.まず,位相干渉に基づく受聴者の位置推定を行うことで受聴者の位置を見つけ出し,次に位相干渉に基づく形状推定により受聴者の頭部形状,特に耳元位置を推定,最後にパラメトリックスピーカを利用した音響ビームの指向性制御により推定した両耳元に対してそれぞれ頭部伝達関数を考慮した音響情報を提示することで立体音響を実現するシステムを提案・検討した.最終年度に実施した主な研究の成果は,波動方程式に対する有限差分法(WE-FDTD)を用いたセミトランスオーラル方式に基づく3次元音場再現手法の検討,キャリア波と側帯波の分離放射によるオーディオスポット形成法の検討に関する学術論文である.これらの研究では,当初の研究計画であったパラメトリックスピーカと音響測距の組み合わせによる立体音響システムという概念にとらわれず,さらに一歩進んだ研究の発展を試みている.これらの研究成果により,ヘッドホンを用いたバイノーラル方式と遠隔スピーカシステムを用いたトランスオーラル方式が主流であった立体音響システムにおいて,セミトランスオーラル方式という第3の立体音響システムを確立した.また,パラメトリックスピーカを利用した音響システムでは,空間におけるある特定の領域のみに音情報を伝えるこれまでにない独創的な立体音響システムを実現した.研究期間全体を通じて実施した研究として,位相干渉に基づく音響測距法,パラメトリックスピーカ,立体音響システムなどに関する様々な検討を行った.これらの研究により,当初の研究実施計画以上の多数の研究成果が得られた.これらの得られた研究成果と知見は,今後の研究の発展に対して非常に重要な要素研究となる.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件)
電子情報通信学会論文誌(A)
巻: Vol.J98-A, No.2 ページ: pp.190-199
巻: Vol.J97-A ページ: pp.304-312
巻: Vol.J97-A, No.4 ページ: pp.295-303