研究課題/領域番号 |
24700134
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
藤田 桂英 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00625676)
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キーワード | マルチエージェントシステム / 自動交渉機構 / 非線形効用関数 |
研究概要 |
既存のマルチエージェント分野における自動交渉機構の研究は論点がそれぞれ独立であると仮定されており、現実的な問題設定ではなかった。一方で、現実世界はWebの発展により大規模な合意形成の必要性が高まっている。そこで、本研究ではマルチエージェントの自動交渉機構に関する交渉論点の依存関係の構造化および分類、交渉論点の依存構造を考慮した交渉手法の提案、現実の交渉事例に基づいた交渉手法の検証および評価に関して研究を実施し、現実世界に近い設定を想定した交渉手法を開発、および、交渉事例を分析および評価を行う。 本年度は、非協力交渉問題における相手の効用情報非公開状況を仮定した二者間交渉手法の開発を行った。上記の状況においても論点間に依存関係が存在する場合に関する既存研究は少ない。本研究では、過去の同一状況下での履歴情報を活用して相手の交渉戦略のタイプを分類する。その際の分類方式はThomas-Kilmann Conflict Mode Instrument (TKI)にしたがい決定している。TKIは非協力交渉下における人間の行動をモデル化したものであり、協力性と自己主張性の二つの指標から5つのタイプに分類したものである。提案手法では、それらのタイプを過去の履歴と現在の交渉状況の違いから判断している。また、相手のタイプに対して最も効果的な戦略を取る。本提案戦略を評価するために、自動交渉エージェント競技会世界大会(ANAC2013)に参加した。その結果、予選では18エージェントで最も高い獲得効用値を得ており、他の最新エージェントと比較して最も効果的であることを示した。 今後、自動交渉機構に関する研究が進むことにより、電子商取引の活性化、無線電波やスマートグリッド等における電力の自動割当技術の向上が期待される。また、自動協調ロボットの発展にも貢献できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、平成24年度に得られた成果をもとにして、論点構造に基づいた効率的な交渉手法の提案を行うとともに、評価、検証のためのテストベッドの作成を行う計画であった。特に、既存の交渉手法との合意形成の効率性および合意案の質的評価に着目する。さらに、交渉論点の構造に基づいた効率的な自動交渉手法および評価に関して、得られた結果をとりまとめ、成果の対外発表もしくは学術雑誌への投稿を積極的に行う予定であった。 しかし、提案したアルゴリズムの事前評価の結果が予想より低い性能であり、計画を変更しさらに自動交渉手法の改善を行うこととしたため、学術雑誌への投稿や対外発表を行えない事項が生じた。また、高性能ワークステーションを購入し、シミュレーション実験を行う予定であったが、十分に実施することができなかった。 一方で、非協力交渉問題における相手の効用情報非公開状況を仮定した二者間交渉手法の開発は達成している。本研究では、過去の同一状況下での履歴情報を活用して相手の交渉戦略のタイプを分類する。その際の分類方式はThomas-Kilmann Conflict Mode Instrument (TKI)にしたがう。シミュレーション実験により、論点間に依存関係が存在しない場合、高い性能を発揮することを示した。一方、論点間に依存関係が存在する場合は、さらなる大規模な評価が必要である。 以上から、本年度に目標としていた交渉論点の依存関係の構造化と分類および自動交渉手法の設計に関してやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き論点構造に基づいた効率的な交渉手法の提案および改善を行うとともに、大規模なシミュレーション評価を行う。テストベッド作成のための交渉事例は研究協力機関から提供され、作成されている。また、単純な既存手法との比較だけではなく各交渉事例に関してデータを提供して頂いた機関からインタビューを行い、現実世界の交渉問題からみた評価を行う予定である。 評価、検証するための共通テストベッド作成のためには、どのような指標が自動交渉プロトコルを分類するのに有効かを評価する必要がある。そこで、すでにマサチューセッツ工科大学で進行しているNego Wiki プロジェクトや国際自動交渉エージェント競技会と協調し、交渉事例の収集およびマッチングシステムの開発を進めて行く。さらに、昨年度達成できなかった、論点間の依存関係の分類結果を活用し、論点構造に基づいた効率的な交渉手法の提案および、評価、検証のためのテストベッドの作成を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、論点構造に基づいた効率的な交渉手法の提案および評価および検証のためのテストベッドの作成を行い、その成果を基に大規模なシミュレーション実験を行うとともに国際会議および学術論文誌において発表する予定であったが、アルゴリズムの事前評価の結果が予想より低い性能であり、計画を変更しさらに自動交渉手法の改善を行うこととしたため、旅費および評価実験装置購入分の未使用額が生じた。 当該年度に、自動交渉機構の構築および交渉事例の解析および大規模シミュレーションによる評価のために高性能計算機とディスプレイを購入する。旅費に関して、国内学会と国際学会において、それぞれ数回の発表を予定している。本年度は国内外に在籍している研究協力者との打ち合わせが当初の予定回数行うことができなかったため、本年度から繰り越しした研究費も含めて打ち合わせのための旅費に活用する。研究を仕上げるために例年と比較して、打ち合わせおよび対外発表を多く行う予定である。人件費を英文翻訳のために活用する。
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