研究課題/領域番号 |
24700144
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
池田 心 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (80362416)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ゲーム情報学 / 楽しませるAI / 多様性 / 囲碁 / ぷよぷよ / オセロ / 共進化 / モンテカルロ木探索 |
研究概要 |
本研究の目的は,すでにある程度強いプログラムが作れるようなゲームを対象に,(1)プレイヤの力量に合わせ,(2)不自然な手抜きが少なく,(3)戦略が多様であるような,相手プログラムを作成する技術を確立することである. この目的に対し平成24年度は,オセロ・囲碁・ぷよぷよに対する別アプローチを用いた研究を行い,それぞれ査読付き学術会議に採択された. オセロに対しては,課題名にある通り共進化アルゴリズムを導入し,プレイヤと同等の強さを維持したうえで“お互いに戦略が離れているほど適応度を高くする”というアイデアを用いることで戦略の多様性を獲得させた.被験者を用いた実験も行い,その有効性を確認した.SCIS-ISIS2012採択(full paper). 囲碁はオセロよりも複雑なゲームであり,まずは「どのような要素が棋風を感じさせるのか」「どのような手が不自然な手と映るのか」を調査,整理することが必要であった.プレイヤ・インストラクター・プロ棋士・ソフトウェア開発者などへの聞き取りからそれらをまとめ,またその一部は比較的簡単にプログラム上で再現できることを示した.GPW2012採択(oral long),OR学会解説記事. ぷよぷよは序盤の布石と中盤の連鎖構成法に戦略の多様性が出やすいゲームであり,特に布石に関しては人間と既存プログラムに大きな違いが出ることが分かっている.そこで人間が用いる序盤戦略を再現するための“定石集”をぷよぷよのような確率的状態遷移を伴うゲームにも使えるように拡張することで人間風の序盤を演出することに成功した.IEEE-CIG2012採択.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,平成24年度はオセロとぷよぷよのみを対象に研究を行う予定であったが,囲碁プロジェクトの進展や関連の方々との交流により,囲碁も対象に含めて一定の成果をあげることに成功した.その点では当初の計画以上の進展があったと言える. オセロについてはルールが単純なこともあり,共進化を用いた多様性の創出まで研究が進み,被験者実験の結果も満足できるものだったため,予定通りほぼ完了したと言える. ぷよぷよについては,特定の定石型を再現することには成功したものの,多様な定石型を共進化を用いるなどして自動で獲得するまでには至らなかった.また,本研究をより多くの研究者やプレイヤに知ってもらうためのプラットフォーム作り,インターネット対戦環境作りについても視野に入れていたがそちらの進捗はセキュリティ関連の検討をより慎重に行う必要が判明したため,やや遅れている. これら状況を総合すると,予定していた通りの対象に予定していた通りの進展を得られたというわけではないが,量・質としてはおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,平成25年度には全体の枠組み・プレイヤ技量の測定法・進化オペレータ・ニッチング技術などの洗練に加え,格闘ゲームに関する研究プラットフォームを作成・公開することを予定していた. 前項現在までの進捗を踏まえ,これを若干修正し,(1)格闘ゲームを先送りする一方で対象に囲碁を加え,また(2)学術用ゲームプラットフォームの構築法に関する研究を行ったうえでぷよぷよの学術用サーバの公開を行いたい. 上記(1)(2)は関連している.学術プラットフォームについては,ぷよぷよのそれが未完成な状態で格闘ゲームに手を出すよりも,“通常のゲームサーバでは求めらず,学術サーバでは求められるものは何か”というテーマを掘り下げ,セキュリティ等にも配慮したプラットフォームを公開したい.一方アルゴリズムについては,オセロやぷよぷよよりも著名な(遊ばれる)対象である囲碁についてかなりの進捗が見込めそうなので,こちらにも十分なエフォートを割きたいと考えている. 研究の進め方そのものについては,予算の使い方等含め,現時点では問題を感じておらず,予定通りまた平成24年度と同様に多くの方と交流しながら進めていきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議に1~2件(IEEE-CIG, CG等)参加予定であり,そのための大きな旅費が必要である.また,国内の合宿形式の会議(GPW),東京開催の研究会(GI,CGF等)に参加するためにも石川という土地柄比較的高額な旅費が発生する.国際会議の採択状況にもよるが,50-70万円程度使用する予定である. 本研究は「楽しさ」「自然さ」などを目標とするために,被験者実験が不可欠である.また国際会議投稿のための英文校正なども含め,人件費・謝金に20-30万円程度使用する予定である. 進化アルゴリズムを用いる場合,複数のパラメータセット(解,個体)を保持して評価する必要があり,大きな計算量が要求される.現有サーバに追加して1~2台,サーバを買い足す予定であり,60-100万円程度使用する予定である.
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