研究課題/領域番号 |
24700145
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
DAM HieuChi 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70397230)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シミュレーション / データマイニング |
研究実績の概要 |
本研究は“MDシミュレーション”.“データマイニング”,“物理・生物的解釈と評価”のプロセスからなり,水和水の定量的な評価方法の手法を確立するために,これまで(a)データマイニング・MDシミュレーションの融合(DM/MD融合法)による解析手法の最適化と,(b)生体系シミュレーションへの適用と水和水の定量的評価,(c)DM/MD融合法による溶媒水分子の定量的な分類と溶液構造の新規解釈を行ってきた.26年度は(a, b, c)の研究成果を受け,溶液構造における物理パラメータ間の構造を推定する手法について非線形現象への対応を可能とする根本的な改良を行った.主に下記の二つの課題を解決した.①DM/MD法の第一原理計算データへの適用:第一原理MDデータに適用し,特に水素結合ネットワークと溶媒水分子のクラスターの自由度について妥当性を検証した.さらに,開発したDM/MD法を無定形ケイ素系の第一原理MDデータに応用し,原子ポテンシャルの学習を行い,この目的に有効な混合線形学習モデル法を新たに開発した.②非線形関係を考慮した物理パラメータ間の決定構造:物理現象を記述するパラメータ間の構造決定は,現象の本質的原理をマイニングし抽出する上で強力なアプローチである.多くの物理化学的なプロセスは非線形であり,特に水分子の振る舞いのようなカオス的複雑系は,非線形な物理化学過程が重要な役割を果たす.今回導入したガウス回帰モデルは回帰操作において,ガウス関数を用いた多次元空間上での近傍接続を行うために,非線形関係を取り込んだマイニングが可能であり,非線形物理現象の原理的理解に本質的である.以上の手法をBarstar-Barnase複合体に適用し,タンパク質のドッキング構造における水溶液構造に対してデータマイニング・解釈を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究では古典MDシミュレーション並びに第一原理シミュレーションを行う.研究代表者は過去に十分な経験を有し,データ生成については当初の計画通り,順調に進んでいる.データマイニングの解析については,特徴空間の設計が解析の成否を決定するが,研究代表者のこれまでの経験に加えて,研究協力者の強力を得て生物学的・物理学的視点やバックグラウンドの知識を活用することによりこれまでに設計した写像が有効であったために,データマイニング解析が順調に進んだ.特に平成26年度,非線形物理パラメータの取り扱いが可能なガウス回帰を応用した手法を開発した事により,さらに効果的なマイニングが見込める.水和水についてのデータマイニング手法についての論文,およびBarster-Barnaseのドッキングに関する論文は準備中である.また得られた成果を1つの国内学会,4つの国際学会において発表した.以上からおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って,前年の研究成果を引き継ぎ,下記の課題に着手する. -DM/MD法による溶媒水分子の定量的分類と溶液構造の新規解釈 平成26年度までの研究でタンパク質の古典MDおよび,小規模な系で行う第一原理MDシミュレーションの結果を比較検証し,ガウス回帰モデルを用い非線形効果を考慮した物理パラメータ関係マップを構築し,カオスや複雑現象に埋もれた水分子間の構造と発生メカニズムを発見する. -溶媒ダイナミクスからのタンパク質ダイナミクスの理論 水溶液中Barster-Banaseのドッキング構造のMDシミュレーションとデータマイニングを引き続き行う.この系にも同様の非線形物理パラメータ関係マップを構築し,さらに詳細な解析を行う.「水のダイナミクスからタンパク質のダイナミクスを予測する」逆問題の解法に関しては,相関ルールを採掘するにあたり,より小さい分子系,すなわちジペプチドの水溶液などを用いて問題を単純化するとともに試行回数を増やして実現性を高める.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析及び手法開発の研究については計画通りに国際学会に参加できなかった為,旅費に未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に手法開発の研究成果発表のための国際学会に参加するための旅費とデータ解析及び研究に関するデータ収集のための人件費・謝金に使用する予定である.
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